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百舌鳥(もず)12 side楓

突然、春くんの匂いに包まれて。 どきんっと心臓が大きく音を立てた。 「ねぇ…嫌?嫌なら、俺を振り払っていいよ」 そう言った春くんの腕は、その言葉通りそっと背中に回されているだけで。 振り払おうと思えばいつでも出来るくらいの力しか入っていなくて。 …嫌だ… 「…嫌じゃ、ない…」 …もっと、強く抱き締めて欲しい… 俺は、自分から春くんの背中に腕を回して抱き寄せた。 「…楓っ…」 「嫌じゃ、ないよ…」 少し背伸びして、春くんの耳元に唇を当てて囁くと。 春くんはふるりと震えて。 俺を抱く腕に、少し力を籠める。 「じゃあ、今どんな気持ち…?」 仕返しとばかりに、耳元で囁かれて。 熱い吐息が耳にかかって、俺もふるっと震える。 「ふふ…楓、かわいい」 「か、かわいくなんて…」 「ねぇ、聞こえる?俺、今すっごいドキドキしてるんだけど」 春くんの手が、俺の頭を包んで。 誘われるようにその胸の上に耳を押し当てると、トクトクと少し早い鼓動が聞こえてきた。 「…ホントだ…」 「楓は?」 今度は春くんが俺の胸に耳を押し当てる。 その時に、柔らかい髪がふわりと首筋を撫でて。 どきんと、また心臓が跳ねた。 「あ…楓の鼓動も早くなった」 春くんが顔を上げて、にこりと笑う。 「同じ…だね?」 「え…?」 「今、俺と楓は同じ気持ち…だよね?」 その言葉が ストンと心に落ちてきた 「う、ん…」 小さく頷くと。 突然、ぎゅっと強く抱き締められた。 「ちょっ…春くんっ…?」 「好きだよ、楓」 春くんの声が 身体の奥底にあるなにかに 小さな灯をつけた 「…俺も…好き…」 考えるより先に、言葉が溢れた。 春くんが、嬉しそうに微笑む。 「俺と…付き合ってくれる…?」 「…うん…」 「好きだよ」 「うん…俺も…」 「好きだよ、大好き」 「も、もうっ…言い過ぎっ…」 何度も連呼されて、さすがにちょっと恥ずかしくなって離れようとしたら。 強い手に、肩を掴まれる。 「だって夢みたいだからさ…何度でも言いたいもん」 「夢…?」 「そう。ずっと、こんな日がくればいいなって、そう思ってた。…諦めてたけど」 「春くん…」 夜空に煌めく美しい星のような彼の瞳が、俺を見つめる。 また 鼓動が早くなる 「だからさ…もっと、近付いてもいい…?」 「え…?」 「キス…してもいいかな…?」 ストレートなお願いに、俺はなんて返したらいいのかわかんなくなって。 返事の代わりに、そっと目蓋を下ろす。 ふ、って春くんの吐息が聞こえて。 少しずつ、近づいてくる気配がして。 「…愛してる…」 蕩けそうなほど甘い声が聞こえた瞬間。 柔らかくて熱い唇が、重なった。 なにか 感じたことのない熱いものが 身体の奥底から沸き上がってきた

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