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火食鳥(ひくいどり)1 side蓮

なぜだっ…!? 今までそんな兆候はなかった 藤沢の研究の全てを尽くした薬を飲ませてるはずなのに…! 慌てて後ろ手に鍵を閉め。 ベッドへと駆け寄ろうとした。 でも、部屋に充満した甘ったるい香りに、頭がぐらぐらと揺れて。 足元が覚束ない。 よろけるようにして、ベッドへと辿り着いた。 「楓っ!おまえ、薬は!?飲んでないのかっ!?」 無理やり布団を捲って、その顔を覗き込もうとしたけれど、一瞬早く伸びてきた腕が、首に絡み付いて。 「う、わっ…!」 ものすごい力で引っ張られて、ベッドへと引きずり込まれた。 「…蓮くん…」 反射的に閉じてしまった目蓋を持ち上げると、目の前には俺を写す潤んだ瞳。 その瞳の奥に ゆらゆらと揺れる妖しげな焔を見つけて 身体が一瞬にして燃えるように熱くなった 「蓮くん…俺、変なの…」 艶めいた声が鼓膜を震わすと ぞくりと背筋が震える それは確かに楓の声なのに まるで初めて聞く声のようで 「へ、変…?」 「ん…身体…熱くって仕方なくて…苦しくって…」 ぐい、と。 腰を押し付けてきた。 上半身は、まだ制服を着ているのに。 下半身は剥き出しで。 硬いものが、腹に当たった。 シーツはぐしょぐしょに濡れていた。 「か、楓…」 また、頭がぐらぐらする 「ねぇ…助けて…」 目の前で動く唇が 真っ赤に熟れた甘美な果実のようで 「蓮くん…たすけて…」 むしゃぶりついてしまえと 頭の中でなにかが囁く 「…っ…おまえ、薬は飲んでないのかっ…!?」 それでも、今にもブチキレそうな理性をなんとか手繰り寄せて。 俺は楓を引き離した。 「…薬…?」 「そう。いつものっ!」 俺を見つめる瞳は、どこか虚ろで。 「ちょっと待ってろっ!」 とにかく、薬を飲ませようとベッドを降りる。 今まで効果があったんだ 今飲ませれば、なんとかなるかもしれない 「い、やっ…行かないでっ…」 だけど、長い指が手首に絡み付いてきて。 その熱さに、あろうことか俺は立ち止まってしまった。 「行かないで…助けて、蓮くん…」 懇願するような声が絡み付いて。 俺を雁字搦めに縛り上げる。 身動きが取れない 「…楓…」 「蓮くん…お願い…」 身体が、勝手に震える。 振り向いたらダメだ 振り向いたら もうきっと 堕ちてしまう 頭の片隅で、なにかがそう警告するのに 「蓮くん…お願い…傍に、いて…?」 甘く、なのにどこか泣きそうな声に。 反射的に振り向いてしまった。 「蓮くん…」 俺に向かって両手を広げたその姿は 真っ白い翼を広げた天使のようで 「っ…楓っ…」 誘われるままに。 その腕の中へと飛び込んだ。

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