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火食鳥(ひくいどり)2 side蓮

赤く熟れた唇に、むしゃぶりついた。 「んんっ…」 重ねた唇は、柔らかくてすごく甘くて。 思考が一瞬で霧散する 誘うように開かれた唇の先へ舌を突っ込むと、すぐに熱い舌が絡まってきて。 俺は夢中になってその甘い舌と唾液を貪った。 「んっ…はっ…ぁ…」 重ねた唇の隙間から時おり漏れる苦しげな吐息が、鼓膜を揺らすたび。 感じたことのない獰猛な欲が、生まれる。 このΩを 自分のものにしたい 「ふ…ぅっ…れん、くっ…」 息苦しいのか、顔を捩って逃れようとするのを、両手で頬を押さえつけて阻止する。 「んんっ…」 逃げるように奥に引っ込めた舌を強引に絡めとって、もっと深く重なるように腰を強く引き寄せれば。 おずおずと、俺の背中に腕が回ってきた。 そのまま、強く抱き締めて。 脳みそが蕩けるほどの激しいキスをする。 「ん…ふ…」 甘い唾液を貪り尽くして。 唇を顎へと滑らせる。 「は、ぁっ…」 仰け反った拍子に、真っ白い喉元が露になって。 香りが、もっと強くなった 強烈なその香りが、俺の全部を満たしていく。 頸動脈に沿って、ねっとりと舌を這わせると、小さく震えて。 その反応が可愛くて、何度もキスを落としていると。 不意に視界に入ってきた 真っ白いうなじ 甘い匂いは、そこから溢れているようで 誘われるように唇を這わせて。 そこに歯を立てようとした。 その時。 「楓?具合悪いんだって?大丈夫?」 ドアをノックする音に続いて、龍の声が聞こえてきて。 咄嗟に、その甘い身体を腕の中に引き寄せた。 「楓ぇ~?寝てんの?」 しつこく何度もノックの音が聞こえてきて。 ついでに、ガチャガチャと乱暴にドアノブを回す音も聞こえて。 思わず、息を止める。 龍はαだ もし今、この部屋に入ってきたら この楓を見たら… 「ん…蓮くん、苦し…」 強く抑え込んだ腕のなかで、楓が抗議の声をあげて。 慌てて、自分の唇でそれを塞いだ。 「んんっ…」 「楓~?」 楓は 俺のものだ 絶対に誰にも渡さない 離れないように頭を抱え込み、声が漏れないように唇を強く押し付けていると。 ドアの向こうで、龍が離れていく気配がした。 完全に気配が遠退いたのを確認して、ようやく唇を離すと。 「蓮くん…もっと…もっとキスして…」 楓の腕が、また伸びてくる。 それに身を任せてしまいたいのを、奥歯を噛み締めて堪えて。 「楓、ちょっとまってて」 無理やり、その身体を引き離した。 「いやっ…」 「大丈夫。傍にいるから。誰にも邪魔されない、二人だけになれるとこに連れてってやるから」 潤んだ瞳で、子どものように縋ってくる楓の目を見つめながら、諭すように話してやる。 この家はダメだ 龍も お父さんだっている 「…ホント…?」 「あぁ。だから、少しだけ待って」 「ん…」 そう言って、そっと頭を撫でてやると。 楓は自分の身体を両手でぎゅっと抱き締めて。 猫みたいに丸くなった。 それを横目で見ながら、制服のポケットから携帯を取り出し。 父の秘書の佐久間を呼び出す。 『はい。蓮さん?どうかされましたか?』 「今すぐ、家の前に車を回してください」

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