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火食鳥(ひくいどり)8 side蓮

目を開いたら、辺りはほんのりと明るくて。 枕元に置いてあった携帯で時刻を確認すると、6:30。 腕の中で静かな寝息を立てる楓は、目蓋が真っ赤に腫れ上がっているものの、穏やかな顔をしていて。 安堵の息を吐きつつ、その目蓋にそっとキスを落とし、起こさないようにベッドを出る。 喉がひどく乾いていたので冷蔵庫を開けてみたけど、しばらく使われていなかった部屋では、なにも入っているわけもなくて。 仕方なくコップに水道の水を汲んで、一気に飲み干した。 身体に水分が染み渡ると、少しだけ頭がクリアになる。 これから… どうしようか… 学校…に行くのは無理だろう いくら数えるほどしかαはいないとはいえ、あんなにフェロモンを撒き散らしてる状態の楓を連れていけばどうなるか、なんて、考えなくてもわかる。 βだって、αほどじゃないにしてもΩのフェロモンに引き寄せられることがあるし。 それに 今の楓を俺自身が誰にも見せたくない 本当はこの二人だけの空間で いつまでだって抱き締めていたい 「今日は、委員会の全体会議だったな…」 文化祭前の重要な会議を 生徒会長の俺がすっぽかすわけにはいかないから 昼過ぎに行って、それだけ出て帰ってくれば… でも… 俺はいいとしても、楓は…? コンクールまであと一週間もない ここに隠れていたら、練習なんか出来ない かといって、学校は無理だし 家に帰るのなんて以っての外だ でも、じゃあどうしたら… 八方塞がりの状況に頭を抱えていると。 ふわっと甘い匂いがすぐ傍で香って。 背中に、トンと軽い衝撃がきた。 「楓、起きたの?」 顔だけで振り向くと、楓は表情を隠すように顔を俺の背中に押し当てている。 「楓…?どうした…?」 「…やだ…」 「え…?」 「どこにも…いっちゃ、やだ…」 腰に回ってきた腕が、ぎゅっと絡み付いてくる。 「…傍にいるって言った…ずっと、いるって…」 不安そうな 迷子の子どもみたいな声 「いるよ…ずっと、傍にいる…」 その腕の中で、くるりと向きを変え。 不安げに揺れる瞳に、笑みを向けた。 「言っただろ?俺が、守ってやるって」 「…蓮くん…」 俺の言葉に、楓はほんの少しだけ頬を緩める。 瞬間、また甘い香りが強く漂ってきた。 「楓…」 甘い蜜に吸い寄せられる蜜蜂かのごとく、その香りに引き寄せられて。 俺を待つように軽く開かれた紅い唇に、自分の唇を重ねる。 「んっ…」 甘く滴る唾液を啜ると、昨日の快楽の記憶が鮮やかに蘇ってきて。 大事なことを考えていたはずなのに 目の前のΩを喰らい尽くすことしか考えられなくなる 「蓮くん…抱いて…」 甘美な誘いを 拒否することなんて出来ない 俺はその甘い身体を抱き上げて。 再びベッドへと沈めた。

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