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火食鳥(ひくいどり)13 side楓

蓮くんは俺を抱き上げて風呂場から連れ出すと、身体を拭いて、バスローブを着せてくれた。 そうして、自分も濡れた制服を脱ぎ捨てて、バスローブに着替え、もう一度俺を抱き上げる。 その首に腕を回すと、優しいキスが髪に降ってきた。 「…また、食べてないの?」 部屋へ移動し、ローテーブルに置かれたままの弁当を見て、蓮くんが眉を潜めた。 「だっ、て…」 食べ物なんていらない それよりも この身体を渦巻く熱をなんとかして欲しい 「そういうわけにはいかないだろ…」 困ったように溜め息を吐いて、俺をラグの上に降ろそうとするから。 俺はぎゅうっと腕に力を入れて、しがみついた。 「やだっ…」 「楓…」 「お願い…蓮くん、抱いて…」 ひとりで何度シても、熱が収まらない 蓮くんじゃなきゃ… 「わかったから…とにかく、ご飯を食べて」 蓮くんは、急かす俺を宥めるようにまた髪にキスをすると、俺を抱えたままラグの上に座った。 「ほら…」 冷たい弁当のご飯を箸で掬い、口元へと持ってくる。 食欲なんてなかったけど、仕方なく口を開けたら、若干ぎこちない手付きでご飯を口に入れられた。 「食べられる…?」 心配そうに顔を覗き込んでくるから、もぐもぐと咀嚼しながら頷くと。 すごく優しい笑みを浮かべた。 それは、ずっと大好きだった笑顔で。 ひとりぼっちになった俺を 安心させて包み込んでくれた ずっと俺の傍らで見守ってくれた その笑顔で 「蓮くん…」 胸の奥が、ひどく熱い。 理由なんてない でもわかるんだ この疼きを 狂ったような情欲を 受け止めて欲しいのは君だけ 大好きな笑顔を見せる 君だけ だって君は 俺のたったひとりの『運命の番』だから… 「蓮くん…早く抱いて…」 「楓…もう少し食べないと…」 「いやっ…我慢できないっ…」 さっきから 身体が疼いて堪らない 早く欲しい 蓮くんだけが、欲しい 「楓…」 俺を見つめる瞳に、焔が灯る。 その焔に吸い込まれるように、顔を近付けて。 舌で唇を舐めると、蓮くんはぶるりと震えた。 そのまま唇をなぞるように舌を這わせると、息が詰まるほどに強く抱き寄せられて。 噛み付くようなキスがくる。 「んっ…」 深く差し込まれた舌に自分のそれを絡めながら、蓮くんと自分のバスローブを剥ぎ取って、剥き出しになった肌と肌をくっつけると。 それだけで、体温が上がる。 ジンジンと下半身が痺れたような感覚に包まれて。 とろりと あの場所が濡れるのがわかった 「ん、あっ…」 その感覚こそが 俺がΩである証 苦いものが喉元まで迫り上がってきたのを、無理やり飲み下す。 「楓…」 だけど、蓮くんには伝わってしまったのか、困ったように眉を下げて。 差し込んでいた舌を引き抜くと、触れるだけの優しいキスを何度もくれた。 「蓮、くん…」 優しく…しないでよ… 壊れるくらいに めちゃくちゃにして欲しい なにも考えられないように ただあなたの焔で焼き付くして そうじゃなきゃ 俺は……… 「楓…愛してる…」 微かに耳に届いた言葉に。 耐える間もなく、涙が零れ落ちた。

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