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火食鳥(ひくいどり)25 side龍

久しぶりの思い出話に盛り上がって。 自分の部屋に戻ってきたのは、夜も深くなった頃。 そのまま寝ようとベッドに潜り込み、目を閉じたら。 不意に春海の顔が浮かんできた。 毎日俺の教室までやってくる、不安と焦りで少しやつれたような、必死な春海の顔が。 『どんな些細なことでもいいんだ。楓のこと、なにかわかったらすぐに教えくれっ!』 頭んなかで響いた声を、無視してごろりと寝返りを打ったけど。 心の中にシミのようにポツンと落ちてきたモヤモヤが、段々大きくなっていって、目が冴えちゃって。 「…あーっ、くそっ!」 叫びながら、勢いをつけて起き上がり。 一度は机の上に放り投げたスマホを、手に取った。 「…これじゃ、フェアじゃねぇよな…」 誰にともなく呟いて、春海の番号を取り出す。 『はい。どうした?』 思いきって通話ボタンを押すと、だいぶ遅い時間だというのにすぐに繋がった。 「あのさ…楓、帰ってきたよ?」 事実だけを感情を乗せずに伝えると、電話の向こうで息を飲む気配。 『…ホントに…?』 「うん」 『…様子はどう?まだ、具合悪そう?』 その言葉に、さっきまでの楽しそうな楓の表情が、脳裏を過った。 「いや…ちょっと痩せたけど、元気そう」 『そっか…よかった』 本気で心配して、本気でホッとしたような声音に、僅かな罪悪感が沸き起こる。 「…楓から、連絡なかったの?」 『うん…なにも。既読は付くけど、返信はなにもない。…なぁ、俺のこと、なんか言ってなかった?』 一縷の望みを託されたような切羽詰まった気配に、さすがに少し、心が痛んで。 「…まだ、ベッドに横になってる時間が多いから…俺も、そんなには話が出来てないし」 『…そっか…』 「…もうちょい元気になったら、俺のほうから聞いてみるから」 ついつい嘘を吐き、出来もしない約束を自分から口にしてしまった。 『ホント?ありがとう!』 そんな俺の言葉を真に受けた春海は、本当に嬉しそうな弾んだ声で。 ますます、心の痛みが大きくなる。 さっきはあんなこと思ったけど 春海は幼なじみで大事な友人で それは楓がどうなろうと変わらないはず なのに 兄さんも楓も まるでもう春海のことは眼中にないみたいだった やっぱ絶対変だ 俺の知らない一週間の間 いったい二人になにがあったんだろう…?

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