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花魁鳥(エトピリカ)7 side龍

『ミッションクリア』 和哉から送られてきたメッセージを、マンションのエントランス横にある植え込みの影で見つめていると。 自動ドアが開いて、兄さんが出てきた。 咄嗟に、身体を屈めて身を隠す。 兄さんは俺の目の前を足早に通りすぎ、停めてあった車へと近付いた。 「悪いな。急いでくれ」 「はい」 開け放たれたドアの向こうから、佐久間がチラリと俺へ視線を投げてきて。 思わず舌打ちしそうになったが、兄さんはそれに気付くこともなく、ドアが閉まる。 走り去る車を見送って、ようやく植え込みの影から立ち上がった。 …らしくない いつものあの人なら どんな些細な違和感だって見逃さないのに 頭んなかには 楓のことしかないってことなのか 合鍵を使ってマンションへ入り、予め佐久間に聞いた7階の部屋を目指す。 お父さんの所有しているマンションは幾つか知っていたけど、ここは俺が知らなかった場所。 兄さんのことだ なにも考えないでここを選ぶわけがない 全ては兄さんの計画通り… 「…俺も、なめられたもんだな…」 自嘲気味の声が出てしまって。 そのことに、つい笑いが零れてしまう。 でも そうそう思い通りになんかさせるかよ エレベーターを降り、廊下の突き当たりの部屋の鍵を開ける。 ドアを開くと。 噎せかえるような甘い匂いが襲ってきた 「うっ…」 頭がぐらりとして。 閉まったばかりのドアに、思わず手をついた。 「っ…は、っ…」 匂いを嗅いだだけなのに、身体の芯が燃えるように熱くなる。 まるで見えない糸に引っ張られるように、自分の意思とは関係なく、足が勝手に部屋の奥へと向かって歩き出した。 短い廊下を抜け、突き当たりのドアを開ける。 さらに匂いが強くなる 「…楓…?」 8畳ほどの小さな部屋に置かれたベッドの上。 こんもりと山になった布団へと声をかけた。 でも、返事はなくて。 代わりに規則的な呼吸の音だけが響いてくる。 「楓…」 駆け寄って、その布団を剥ぐと。 無垢な天使のような寝顔の楓は なにも身につけてはいなかった その白い絹のような肌を見た瞬間、目の前が真っ赤に染まって。 気が付いたら、俺はベッドに飛び乗り、横を向いて眠っていた楓の肩を掴んで上を向かせて。 微かに吐息を漏らす赤い唇に、噛みつくようにキスをしていた。 「んっ…」 甘い声が、鼓膜をくすぐって。 下半身が火が点いたように熱くなった。 その滑らかな身体を抱き寄せると、すぐに背中に回ってきた腕に、心臓が大きく跳ねる。 誘うように薄く開かれたままの唇を、強引に抉じ開けて舌をねじ込めば。 まるでそれを待っていたかのように、湿った熱い舌が絡まってきて。 脳みその芯が、ビリビリと痺れる。 甘い唾液を吸うと、俺に抱きついている腕に力が入って。 長い睫に縁取られた目蓋が、微かに震えながら持ち上がる。 緩かった眼差しが、俺に焦点が合った瞬間。 「………っ!!」 大きく見開かれたその瞳に 恐怖の色が広がった 「んーっ…!」 甘えるように抱きついていた腕が、解かれ。 俺の肩を、力の限り押した。 思わず、腕を離してしまって。 その一瞬の隙に、楓は俺の腕をすり抜け、ベッドから転がり落ちた。 「楓っ!」 慌ててその後を追って。 手を伸ばしてギリギリ届いた二の腕を強く掴み、そのままフローリングの床へ引き摺り倒す。 「龍っ…なんでっ…!」 俺に組み敷かれ。 見上げる瞳には、恐怖の色しかなくて。 頭の片隅で なにかがブチンと切れる音がした

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