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花魁鳥(エトピリカ)11 side龍

「イク、イクッ…あーっ…」 ほんの少しの精液を迸らせて。 楓はそのまま意識を手放した。 何度達したのかもわからない 果てしない欲望に打ち勝てず 精が尽きるまでその奥へと注ぎ込んだ 「うっ…はっ…」 最後の一滴までも楓のなかに注いで。 ようやく熱い中から抜け出すと。 どろりと大量の精液が流れ出てくる。 慌ててそれをティッシュで拭き取って。 フローリングに横たわったままの楓を抱き上げ、ベッドへと寝かせてやった。 汗で額にぺったりと張り付いた髪をかき上げ、おでこにそっとキスを落とすと。 一瞬だけ睫毛が震えたけれど、すぐに規則的な呼吸の音が聞こえてくる。 「…楓…」 あんなに激しく乱れたことを微塵も感じさせない、無垢な寝顔に。 身体の奥から愛おしさが溢れ出す。 「楓…愛してる…」 考えるよりも早く、言葉が溢れて。 「だから…俺だけのものになってよ…」 静かに眠るその隣に寝転び、愛おしい身体を抱き寄せると。 ピロン、とスマホの通知音が聞こえてきた。 そういえば さっきも何度か鳴ってた気がする… 楓を抱いてる最中は、そんなところに気をやる余裕もなかったから無視してたけど、なんだか嫌な胸騒ぎがして。 ベッドを降り、脱ぎ捨てたジャケットからスマホを取り出すと、表示されたのは和哉からのメッセージ。 『大丈夫だったかな?』 なんのことかとトーク画面を開いてみれば、20分ほど前にもメッセージが入っていて。 『ごめん。もうちょっと頑張ろうと思ったんだけど、蓮さん、なんか勘付いたみたいで…もう帰ったよ』 サーっと、一気に血の気が下がった。 そうだった 楓を他の場所に移さなきゃ…! 急いで服を身に着けて。 楓の服はどこだろうとクローゼットに向かったその時。 ガチャンと、鍵が開く音が聞こえた。 「やべっ…」 咄嗟に、ベッドで眠る楓へと駆け寄る。 バタバタと廊下を走る音を聞きながら、なにも身に着けていない身体に毛布を巻き付けていると。 「龍っ!!」 壊れるような勢いで開いたドアの向こうから、兄さんの怒鳴り声が飛んできた。 「おまえっ…なにやってるっ!」 ドアのところに仁王立ちになって、俺を睨み付けてる兄さんの瞳には。 怒りよりも更に強い、まるで憎しみにも似た光がギラギラと浮かんでいて。 反射的に、楓を腕のなかに抱き寄せる。 兄さんの瞳の中に、焔が燃え上がったのが見えた。 「…楓を、離せ…」 聞いたことのない、地の底から聞こえてくるような声に。 背筋がぶるっと震えた。 「…嫌だ」 恐ろしいまでの目力に気圧されないように、腹に力を入れて睨み返す。 「今ならまだ、なかったことにしてやる。楓を、離すんだ」 兄さんの言葉は、まるで楓が自分のものであるかのような言いぐさで。 カッと頭に血が上った。 「嫌だっ!楓は、俺のもんだ!」 「龍っっ!!」 叫んだら、腕の中の楓がビクッと震えて。 目を覚ました。 「龍…どうしたの…?」 「楓っ!」 不思議そうに俺を見上げた楓は、兄さんの呼ぶ声にまたビクッと反応して。 その姿を見た瞬間。 するりと俺の腕から抜け出した。 「蓮くんっ…」 「あっ…」 慌てて腕を伸ばしたけど、掴めたのは楓に掛けてあった毛布の端っこだけで。 楓は俺を振り向くこともなく、生まれたままの姿でまっすぐに兄さんの腕の中に飛び込む。 「ごめん…遅くなって…」 「ううん…」 兄さんがしっかりと楓を抱き締めると、楓は甘えるようにその首に腕を回してしがみついて。 目の前が 怒りで真っ赤に染まった 「…出ていけ。楓は、おまえには渡さない」 苛烈な眼差しが、俺を射抜く。 楓は、兄さんの首筋に顔を埋めたまま、もう俺を見ようともしなくて。 どろどろと沸き上がる憎しみを、唇を噛んで耐えながら。 俺は、比翼の鳥のように寄り添う二人を、ただ指を咥えて見ているしかなかった。

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