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花魁鳥(エトピリカ)21 side楓

ベッドに放り投げられ。 スプリングに深く沈んだところを馬乗りになられた。 「嫌だっ…やめてよっ…!」 必死に抵抗したけど、服を引き裂かれて。 がぶりと肩に噛みつかれた。 「うぁぁっ…」 皮膚の裂けた、焼け付くような痛みが。 全身を駆け抜けていった。 「う…ぅ…」 心臓になったみたいにドクドクと脈打つ肩へ手を当てると、じわりと赤く染まる。 痛みに悶える俺を、龍は感情の見えない冷たい瞳で見下ろしていた。 「大人しくしてろ。次はうなじを噛むぞ。俺の番になるのか?」 「…や…だ…」 「だったら、黙って俺に抱かれてろ」 地獄の底から響いてくるような、おぞましい声でそう言い捨てて。 龍がまた、覆い被さってくる。 俺は硬く唇を噛んで、目を閉じた。 「…楓…」 熱い吐息が、肌を撫でて。 熱い唇が、肌の上を滑っても。 龍がどんなに優しく愛撫しても。 なにも感じない。 「…なんでだよっ…」 今はヒートじゃないから 俺を抱いてるその腕が あの人のものじゃないから 「っ…くそっ…」 太股を強く掴まれて。 大きく開かされた。 「…っ…!」 硬いものがそこに押し当てられて。 無意識に身体に力が入る。 「ああぁぁぁっっ…!!!」 次の瞬間、身体をまっぷたつに引き裂くような強烈な痛みが、脳天を突き刺した。 「い、やっ…痛いっ…龍、やめてっ…!」 濡れていなかったソコに無理やり突っ込んだ龍は、ぐいぐいと力任せに奥へと進んでこようとする。 「くっ…力、抜けよっ!」 「いやぁっ…龍、抜いてっ…」 無理やり押し広げられるソコからは、絶え間ない痛みが伝わってきて。 それを合図に、まるで自己防衛のように蜜が溢れ。 意志とは反対に、身体が勝手に相手を受け入れ始めた。 忌まわしい身体…… 「ふっ…なんだ、濡れてんじゃん」 蔑むような言葉に、涙が零れ落ちる。 最奥までその塊を俺の中に押し込むと、龍はぎゅっと俺を抱き締めた。 「…楓…愛してるんだ…」 甘く囁かれても、心は冷たく凍りつくだけ。 なのに。 「っ…ぁ…ぁっ…」 ゆっくりと揺らされると、感じたくもない快感が湧きあがってきて。 俺を押し流していく 「あっ…ぁ…あっ…あっ…」 感じたくないのに あの人以外に感じたくないなんてないのに 「すげー気持ちいい…」 「あぁっ…やっ…やぁっ…」 「楓も気持ちいいんだろ?自分から絡み付いてくるよ…」 心と身体がバラバラになっていく 嫌だ 蓮くん助けて 助けて………… 「楓っ…楓っ…」 「あっ、あっ、あっ…」 「もう出るっ…楓の中に出すよっ…」 「やっ…やだっ、やめてっ…あぁぁっ…」 身体の奥深くでじわりと広がった熱を感じながら。 俺も同時に解き放って。 また、涙が零れた。 息苦しくて、目が覚めた。 「うぅっ…」 身体を動かすと、途端に焼け付く痛みが肩から広がる。 熱い… 苦しい… 熱でも出てるのかな… ぼーっとした頭でそんなことを考えながら、腰に巻き付いていた腕を外し。 肩を庇いながら身を起こし、ベッドを抜け出した。 よく見ると、俺はバスローブを身に付けていて。 肩の傷も、包帯が巻いてある。 身体も、綺麗になってるようだった。 振り返ると、ベッドの上には静かに眠る龍の姿。 「…罪滅ぼしの、つもり…?」 なぜか、笑いが込み上げてきた。 足音を立てないように、そっと部屋を出て。 ドアを閉める。 真っ暗な廊下の灯りを点けると。 バラバラになったブレスレットの残骸が あちこちに転がっていて 「…っく…蓮くん、ごめんっ…」 『ターコイズは「天の神が宿る石」として、危険や邪悪なエネルギーから持ち主を守り、勇気と幸福をもたらしてくれるんだって。だから…これを着けてる限り、きっと、神様がおまえを守ってくれるから…』 「ごめっ…ごめ、なさ…ぃ…」 泣きながら。 散らばった石を拾った。 拾い集めたそれを、手のひらの上に乗せると。 黒い石の真ん中でターコイズがキラリと光って。 『愛してるよ…楓…』 蓮くんの声が、聞こえた気がした。 「っ…蓮くんっ…」 会いたい 今すぐに抱き締めて欲しい 蓮くん… 今どこにいるの…?

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