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不如帰(ホトトギス)16 side和哉
「…ぁ…ぁっ…もう、むりっ…」
ローションを何度も継ぎ足しながら、執拗に内壁を擦られ、拡張され。
頭の天辺から指先まで、甘い痺れに支配されていく。
こんなに時間をかけて身体を開かれたのは初めてで。
うっかり、涙が溢れた。
「…なんで泣いてんだよ」
「だっ、て…」
まるで本物の恋人同士のセックスみたいなんだもん
蓮さんは、また困ったみたいに眉を下げて。
溢れ出る涙を唇で掬いとってくれる。
「…す、き…」
思わず、首に両手を回してすがりついた。
「好き…ずっとずっと…出会った時からずっと好き…」
身体中から溢れる思いを、唇に乗せる。
同じ言葉が返ってくることはないけど。
蓮さんは、返事の代わりみたいな優しく甘いキスをくれた。
「…ねぇ、早く…」
「…ああ…」
先を強請 ると、指が引き抜かれ。
枕元に放り投げてあったゴムを掴もうとするから、思わず手首を掴んでそれを制する。
「和哉?」
「…いらない…生で、欲しい…」
俺の言葉に、一瞬躊躇するように視線が揺れたけど。
ふ、と小さく息を吐き出すと、ゴムを無造作にベッドの下へと投げ、俺の足を抱えた。
熱いモノの先端が、その入り口へ押し付けられる。
受け入れやすいように腰を浮かし、両足を彼の腰に巻き付けると。
ぐぐっと先端が中へと入ってきた。
「あぁっ…」
強い圧迫感に、仰け反った。
熱くて太い熱が、狭い内壁を強引に抉じ開けるようにして少しずつ身体の深いところへと進んでくる。
「ぁ…ぁ、ぁっ…」
苦しさに自然に身体に力が入ってしまうのを、浅い呼吸を繰り返しながらなんとか逃し。
根元まで埋め込まれたのを感じて、ようやく大きく息を吐き出した。
「痛くないか?」
いつものように、そう聞いてくる。
それは俺がβで
男を受け入れる身体を持っていないから?
これがもし、あいつだったら…
そこまで考えて。
俺は思考を無理やり遮断した。
くだらないことを考えるな
あいつはとっくにいなくなったんだ
蓮さんはちゃんとここにいる
ここにいて
俺だけを見てくれているじゃないか
「和哉?どうした?ツラい?」
心配そうに眉を寄せている頬に、唇を寄せる。
「ツラいわけないじゃん。すごい気持ちいい」
そう囁くと、間近で俺を見つめる瞳の中の欲情の焔が大きくなった。
「…動くぞ」
「うん。きて…」
抜けるギリギリまで腰を引かれて。
一瞬の空白の後、ずん、と奥まで突き刺される。
「あぁっ…」
甘い痺れが、背筋を駆け抜けていく。
そのままゆっくりとしたピストンが始まった。
「あっ…ぁぁ…ぁっ…」
俺の様子を伺うように、もどかしいくらいのゆったりとしたスピードで抜き差しされて。
熱が、じわじわと身体の中に溜まっていく。
「やっ…ぁっ…もっとっ…激しくしてっ…」
溺れたくて
今はただ
その熱さだけを感じていたくて
そう口走ると、不意に角度を変えた先端が一番感じるところを掠めた。
「あぁぁっ…」
「ここだろ?」
傲慢さを含んだように聞こえる声に、身体が震えた。
「んっ…う、んっ…そこ、もっとシテっ…」
俺の言葉を合図に、ピストンが一気に激しくなる。
「あぁっ…ゃっ…あぁぁっ…」
揺さぶられ。
かき混ぜられて。
彼の作り出す快楽の渦の中へ呑まれていく。
この瞬間が
堪らなく幸せで
絶対に手放したくない
そのためになら
俺はなんだってするだろう
たとえ人殺しでも…
「…っ…かずっ…」
不意に切羽詰まったような蓮さんの声がして。
俺の中の熱の塊が、ぐんっと大きさを増したのを感じた。
「んっ…蓮さんっ…イキ、そっ…」
同時に達するために、俺も自分のを握る。
ガツンガツンと、最奥を突き上げられて。
その動きにあわせて自分のを擦ると。
身体中を渦巻いてきた熱が、一気に放出へ向かって下腹部へ集まってきた。
「あっ…あぁっ…イクっ…イクぅっっ…」
目の前がチカチカっと光って。
脳みそが痺れるような快感と同時に、熱い飛沫が手と腹を濡らす。
「…っく…」
一拍遅れて、蓮さんの呻くような声が聞こえて。
身体の奥に、じわりと熱いものを感じた。
初めて
中で出してくれた…
たったそれだけのことが、嬉しくて、幸せで。
「蓮、さん…だい、すき…」
乱れた呼吸の下から、もう一度愛を囁く。
「…和哉…」
やっぱり同じ言葉は返してくれなかったけど。
もう一度優しいキスをくれた。
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