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小夜啼鳥(ナイチンゲール)17 side春海
「やっ…ぁぁぁっ…いいっ、きもちいいっ…」
甘く艶やかな啼き声が、部屋中に響き渡る。
あっさりと俺の指を3本飲み込んで蠢く後孔からは、止めどなく蜜が溢れでて、ソファをしとどに濡らした。
「あっ、だめっ…もう、だめっ…」
大きく開いた足が、ピクピクと小刻みに震え出す。
握り込んだ肉棒の先端が、放出を求めてパクッと開く。
「だめっ…もう、イク…イッちゃうっ…」
「いいよ、楓。いっぱい出して?」
耳元で囁いてやると。
「っ、イク…あ、ぁーーーーーっ……」
脳みそが痺れるほど、一際甘やかな声で啼いて。
俺の指をぎゅっと強く締め付けながら、真っ白な欲を吐き出した。
「あっ、ぁ…ぁっ…」
びくんびくんと震えながら、何度か吐き出して。
ぐったりとソファに沈んだ身体から、指をゆっくりと引き抜いた。
どうしよう…
このまま抱いてしまいたい…
俺じゃあヒートは収められないけど
俺、本当は今でも君のことを…
「楓…このまま、君を抱いてもいいかな…?」
欲望に逆らえず。
浅く息を吐いたまま、焦点の合わない目で天井を見上げていた楓の上に、覆い被さった。
「…ごめん…」
上から、楓を覗き込むと。
「あ…ぁ…ぁ…」
びくんっと震えて。
虚ろだった瞳を、大きく見開いた。
「あ、あ、あ、ぁ…あぁっ…」
「楓…?」
その表情は、さっきまでのヒートに浮かされ、甘く蕩けそうだったものとは全く別の。
なにか恐ろしいものでも見たかのような、恐怖に支配されたようなものに変わっていて。
「ああぁぁぁっっ…!」
「楓っ!?どうしたのっ!?」
思わず叫んだ瞬間、楓はひくっと息を吸い込むと、俺から逃げるように身を捩り、暴れだした。
「やだぁっ…やめてぇっ…!」
ソファから落っこちそうになり、咄嗟に楓を抱き締める。
「いやっ!やめてっ…いやぁッ…」
「楓っ!?どうしたんだよっ!?」
「いやッ…やだっ…!」
何を聞いても、ただ嫌だと泣きわめくばかりで。
手足をバタつかせて暴れるのを、どうすることもできなくて。
突然の豹変に、ただ早く落ち着いてくれとそれだけを願いながら、その身体を強く抱き留めておくことしかできない。
「楓、落ち着いてっ…なにもしないからっ…俺は、君になにもしないからっ…」
「やっ…やだ…も、やだ…」
「大丈夫だからっ…君が、嫌なことは絶対にしないからっ…」
そんなにβの俺に抱かれるのは嫌なのかと、押し潰されそうな胸の痛みに耐えながら、何度もそう言い聞かせていると。
「…ころ…して…」
突然、聞こえてきた言葉
「…殺して…早く…」
「楓っ!?」
驚いて。
抱き締めた腕を緩めて、顔を覗き込む。
そこにあるのは真っ暗な闇しかない瞳
「殺してっ…早く殺してよぉっ…」
絶望の闇に呑まれたようなそれから、ボロボロと大粒の涙が溢れ落ちる。
「やだぁっ…早く、殺せっ…」
「楓っ…」
動きを止めたはずの楓が、また暴れ出す。
「楓っ…落ち着いてっ…!」
「やっ…やだっ…」
「俺は君になにもしないからっ…」
狂ったように暴れる楓を。
俺は途方に暮れながら、ただ抱き締めていることしかできなかった。
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