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大瑠璃(おおるり)18 side蓮
「はっ…ぁ…ぁ…」
程なくして、楓の呼吸が乱れ始めた。
その瞬間、今まで微かに香っている程度だった甘い香りが、濃厚さを増して辺り一面に広がった。
「…っ…」
纏わり付く、甘美な媚薬のような楓のフェロモンに、一気に身体の芯に火が着いたように熱くなる。
思わず抑制剤に手を伸ばそうとして、寸でのところで思い止まった。
『蓮くんは、ギリギリまで抑制剤を我慢して欲しい。飲んでしまったら、君のフェロモンが抑えられてしまう。そうなったら、楓は君だと認識出来なくなるかもしれない。抱き潰すのは厳禁だけど、そのギリギリのラインまで自分を抑えないで欲しいんだ。…ま、君くらいのαなら、出来るよね?僕は、αの優劣はΩのヒートに当てられた時に、いかにバーストせずに自我を保っていられるかどうかだと思ってる。低能なαほど、Ωのフェロモンに自我を失くして性犯罪に走ってしまうからね。君程の由緒正しいαなら、そんなことにはならないだろう?』
一見穏やかで丁寧に聞こえるのに、まるで挑戦状でも叩きつけるかのような傲慢さを秘めた誉先生の言葉を思い出しながら、俺は次々に溢れ出す濃厚な楓のフェロモンに当てられ過ぎないよう、気合いを入れ直した。
昔、楓のヒートの時は俺も我を失くしかけた。
今度は絶対にそうなってはならないんだ。
楓をこの腕に取り戻すために。
「蓮、くんっ…あつ、いっ…」
腕の中の楓が、呼吸を乱しながらもぞもぞと身悶える。
その言葉通り、華奢な身体はもうすっかり熱を持ち始めていた。
「うん。楓の身体、すごく熱いな…」
「や、だ…怖いっ…」
「大丈夫。俺が、傍にいる。ずっと傍にいるから」
落ち着かせるように背中を擦ると、ぎゅうっと強くしがみついてくる。
「う…ふ、ぅ…んっ…ね、ぇ…さわって…おねが、い…」
喘ぎが大きくなってきたと思ったら、不意に声に甘さが増して。
ぐっと身体を密着させてきたと同時に、腹に硬いものが当たった。
「も…がまん、できないっ…ねぇっ、さわってよぉっ…」
間近で見上げてきた瞳には、さっきまでの不安は消え去り。
代わりに支配するのは、欲情に濡れた色。
「っ…楓っ…」
「ねぇっ、はやくぅっ…」
思わず息を飲んだ俺の手を掴み、強引に引っ張って。
もう硬く勃起した自分のペニスを下着越しに握らせる。
「はやく、きもちよくしてっ…」
そのまま、擦り付けるようにゆらゆらと腰を揺らめかせた。
「あっ…ぁ…ぁぁぁっ…」
その淫らな姿に。
俺を包み込む、噎せ返るようなフェロモンの香りに。
身体の芯が発火したように熱くなって。
「楓っ…」
我慢できずに、着ていたバスローブを脱がせてベッドへと沈めた。
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