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白鷺(しらさぎ)3 side楓

「たまには、少し寄り道していきませんか?」 走り出した車の中で、唐突に和哉がそう言った。 「え…?」 最初、なにを言われたのかわからなくて。 「寄り道、って?どこへ?」 和哉の横顔に訊ねると、ゆっくりと車のスピードを落としながら、ハンドルを左に切り。 チラリと俺を見る。 「俺の、家です」 「へ?」 その答えに、ますます訳がわからなくなった。 「俺たち、せっかく同じところで働いてるんだし、もう少し交流を深めてもいいと思いません?古い付き合いなわけだし」 「は、ぁ…」 「ああ、心配しなくても蓮さんには俺から連絡入れときました。打ち合わせ終わったら、迎えにくるそうですよ」 その言い方に、俺の寄り道は既に決定事項だったことを悟る。 「あ、そう…」 まぁ、蓮くんがいいって言うならいいけど… でも、二人でって…なに話したらいいんだろ…? なんだかちょっと複雑な気持ちのまま、連れてこられた和哉の家は、俺たちのマンションからそんなに離れていない場所だった。 「どうぞ」 ドアを開けると、中は明かりが点いていた。 「ただいま」 促されるままに玄関へ進み、靴を脱いでると、和哉が奥へ向かってそう言って。 その後に、パタ、パタと、ゆったりとした足音が近付いてくる。 「おかえり、かず」 リビングのドアが開き、現れたのは。 「え…?」 「楓っ!?」 春くんだった。 「え?なに?かず、どういうこと?」 「言ったじゃん。夕飯、三人分用意しといてって。もしかして、ないの?」 「いや、あるけど…でも、それはおまえが、すっごいお腹空いてるから二人分食べたいって言うからっ…」 「なら、いいじゃん。俺、腹減った。ハンバーグにしてくれた?」 「う、うん」 「じゃ、早く食べよ」 あわあわしてる春くんと、至っていつも通りの和哉のやり取りを呆然と聴いていると。 「楓も、腹減ったでしょ?上がってよ」 和哉に腕を引っ張られて。 「う、うん。お邪魔、します…」 恐る恐る、足を踏み出した。 「…久しぶり。元気そうだね」 春くんが、笑ってくれて。 「…うん。春くんも、元気だった?」 見慣れた優しい笑顔に、心の中がほわんと温かくなる。 「元気だよー。俺、元気だけが取り柄だし!」 「バカは風邪も引かないって言うしね」 「ちょっ…かず!バカってなに!?ひどくない!?」 「俺より、頭悪いじゃん」 「そうだけどっ!」 素っ気なく言いながら、リビングへと入っていく和哉の後を、春くんがぷりぷり怒りながら追っ掛けて。 その光景が、記憶の底にしまいこんでいた懐かしいあの生徒会室の景色と重なって。 じん、と目の奥が熱くなった。 「楓?早くおいでよ。楓の分も、ちゃんとあるからさ」 「…うん。ありがと、春くん」

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