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白鷺(しらさぎ)30 side志摩
「…っ…ふ、ぁっ…」
長い長いキスで、僕の頭は酸欠状態で。
唇が離れたあとは力なんて入らなくて、そのまま龍さんの逞しい胸に身体を預けた。
「ふ…可愛いな…」
龍さんの艶のある低い声が、鼓膜を揺らすと。
それだけでドキドキが大きくなって。
熱い唇がうなじを掠めると、ゾクゾクが止まらなくなって。
妊娠中はヒートは来ないはずなのに、身体が一気に熱くなる。
「おまえは、いい匂いだな…」
何度も何度も、うなじを舐められて。
堪らなくなって、龍さんにぎゅっと抱きついた。
「龍、さん…欲しい、です…」
「…志摩、それは…」
戸惑ったような声音に、きゅっと胸が締め付けられる。
「お医者さんは、安定期の間は激しくしなきゃ大丈夫だって言ってました。それでも、ダメですか?やっぱり僕には、そんな魅力はないですか?」
言葉を紡ぐたびに、苦しくなって。
声に涙が混じるのが自分でもわかった。
最近の龍さんはとっても優しいし
僕のこと、とっても大切にしてくれる
でも、僕を見る目は穏やかで
まるで父親が子どもを見るような感じがして
やっぱり、たまたま子どもが出来ちゃったから僕と結婚しただけなのかな…
龍さんは僕を本当のパートナーにはしたくないのかな…
目の奥が熱くなって、すんっと鼻が鳴ったとき。
「違うっ!そんなこと、ないっ!」
龍さんの力強い声が響いて。
僕は、強く抱き締められた。
「こんなこと…今までの態度から、信じてもらえないかもしれないけど…愛してる、志摩。俺は、おまえのことをちゃんと愛してる」
突然告げられた、初めての愛の告白に。
沈んでいた心に一気に温かいものが広がる。
「俺だって、おまえを抱きたい。おまえの優しいフェロモンに包まれたい。でも、そんな自分の欲望を優先して、お腹の子どもになにかあったら、それこそ取り返しのつかないことになるから。だから」
龍さんは優しく僕にキスをすると、僕をソファへ押し倒し、パジャマのズボンと下着を一気に剥ぎ取った。
「ええっ!?なにっ…」
「今は、これで我慢してくれ」
そう言って。
ピョコンと飛び出した僕のソレを、パクッと咥える。
「ひゃぁぁぁっ…」
あまりに突然のことに、頭がパニックを起こして。
慌てて腰を引こうとしたら、強い腕に捕まえられた。
龍さんの口が僕のボクを包み込んでる、その事実だけでイッちゃいそうなのに、窄めた唇でゆるゆるとしごかれれば。
最近自分でもしてなかったからか、あっという間にソコに熱が集まってくる。
「ダメ、ですっ…龍、さんっ…僕、すぐイッちゃう、からぁっ…」
力いっぱい肩を押しても、龍さんはびくともしなくて。
その間にも、僕のボクはますます熱く滾ってきて。
「は、ぁっ…ダメっ…イクっ…でちゃうっ…」
強く、先っぽを吸われると。
目の前が真っ白にスパークして。
「あっ、あーーーっ…」
我慢できずに、あろうことか龍さんの口の中に秒速で射精してしまった。
「はっ…ぁ…っ…ごめ…なさい…」
気怠い余韻に、びくびく震えながら謝ると。
龍さんは口の中のモノをティッシュに包んでゴミ箱に捨て、優しい微笑みを浮かべ。
僕をそっと抱き起こすと、優しく抱き締めてくれる。
「気持ちよかったか?」
「は、はい。でも、すみません…こんなこと、させてしまって…あの、口で良ければ僕もっ…」
「気にするな。俺がやりたくてやったんだ。可愛い志摩が見られて、俺は満足だから」
「でもっ…」
「…子どもが生まれたら、その時は容赦しないから。覚悟しとけよ?」
僕の言葉を遮って、そんなことを言われて。
途端に、顔が赤くなるのが自分でもわかった。
「は、はい…」
龍さんが、愛おしげに僕を見つめていて。
なんだか恥ずかしくなった僕は、慌てて熱い頬を龍さんの胸に押し付ける。
大きくてあったかい手が、僕の頭を撫でてくれて。
その心地好さに、目を瞑って龍さんの静かな鼓動の音を聞いていると。
「なぁ、志摩…なにを、悩んでる?」
不意に、そう訊ねられた。
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