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大水薙鳥(オオミズナギドリ)18 side蓮
宿に戻り、早めに夕食にしてもらい。
その後、まったりとくつろぎながらネットニュースをチェックしていると。
向かい側で本を読んでいたはずの楓が、いつの間にか真横に座って俺へと身体をくっつけてきた。
「どうした?」
聞いても、なんだか不貞腐れたように唇を尖らせるだけで。
でも、その手は俺の腕をぎゅっと握ってくる。
「楓?」
「…んないの?」
「え?」
「だからっ…そのっ…し…ないの…?」
こんなに近くにいるのにようやく聞こえるほどの小さな声でそう言った楓は、茹でダコみたいに真っ赤で。
可愛くて可愛くて。
少し意地悪したくなってしまう。
「するって、なにを?」
わざととぼけると、一瞬だけ怒りのようなものが眉間に浮かんだ。
まぁ、そんな顔も可愛いんだけど
「っ…もういいっ!」
頬を膨らませて、離れていこうとする腕を掴んで、腕のなかに無理やり囲いこむ。
「嘘、ごめん。俺もしたい」
「っ…蓮くん、最近すっごく意地悪だ…」
「楓が可愛すぎるから、つい…な。ごめん。許してくれる?」
尖らせた唇の端に触れるだけのキスをしながら、殊勝な顔を作って見せると。
チラリと横目で睨んだかと思ったら、くるりと身体を反転させて、ぎゅうっと俺に抱きついた。
「…もう意地悪しない?」
「うん。いっぱい愛してやる」
「っ…うん」
甘い声で耳元で囁いてやると、ふるりと震え。
小さく首を縦に振る。
その身体を丁寧に抱えあげ、ベッドへと向かった。
「でも、大丈夫か?疲れてないか?」
そっとベッドに寝かせながら、血色の戻った頬にキスをすると。
「うん。大丈夫」
お返しとばかりに、楓も俺の頬にキスをくれる。
「…もしかして、ずっと誘われるの、待ってた?」
「ぅ…だって…蓮くんがあんなこと言うから…」
「あんなことって?」
「…どうやって…楓を、可愛がろうか、って…」
でも、適当な言い訳で口にした言葉を、恥ずかしそうに持ち出されて。
内心、ちょっと焦った。
まさか、そんなの覚えてるなんて思ってなかった。
「可愛がって欲しかったんだ?」
「…ん…だって、昨日俺がもうやんないって言ったから…蓮くん、我慢してたでしょ?だから…」
申し訳なさそうに眉を下げながら告げられた言葉に、愛おしさが溢れる。
俺自身はそんなに気にしてなかったのに、言い出した楓の方が気にしてたなんて。
こりゃあ、全力で期待に応えないといけないなぁ…
「うん。めちゃめちゃ我慢してた。だから、今日は遠慮なしでおもいっきり可愛がってもいい?」
「…いつも、遠慮なんてしてないじゃん」
楓はそう言って。
恥ずかしそうに顔を背けながら、自分で浴衣の帯をほどいた。
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