448 / 566

鳳凰(ほうおう)5 side楓

「なんか…案外あっさりなんだね…」 マンションに戻って、ソファで一息吐きながら。 俺は左手の指輪を、リビングに差し込むオレンジ色の光にかざした。 お父さんの病院の帰り 二人で区役所に寄って婚姻届を提出した 今は別の戸籍とはいえ 俺たちは本当は血の繋がった実の兄弟なわけで もし受理されなかったらどうしようなんて ドキドキしながら待ってたら ものの数分であっさりと受理されて なんだか拍子抜けしてしまった 「まぁ、役所なんてそんなもんだろ。よかったじゃん、いろいろ聞かれなくて」 「そうなんだけどさ…なんか、結婚したって実感、ゼロっていうか…」 「じゃあ結婚式でもしたら、実感するか?」 「えっ!?結婚式!?」 でも、蓮くんが笑いながら俺を引き寄せ、耳元で囁いた言葉に。 びっくりして、思わず飛び上がりそうになる。 「なに?結婚式、嫌なのか?」 「い、嫌じゃない!ただ、結婚式なんて考えたこともなかったから…」 慌てて言い訳を口にする俺を、蓮くんは笑顔のまま抱き締めた。 「いつか…そうだなぁ…この子たちが生まれて落ち着いたら、二人だけで結婚式、しようか」 「…うん」 「あんまり人のいない、静かな南の島なんかいいな。楓が真っ白いウエディングドレスを着て白い砂浜を歩いたら、震えるほど綺麗だろうなぁ」 「え!?俺、ドレス着るの!?」 「嫌?」 「…蓮くんは、着て欲しいの?俺、男だよ?」 「うん。男だけど、絶対世界一綺麗な花嫁だから」 なぜか自信満々な蓮くんにそう言われると、ドレスなんてちょっと恥ずかしいなって思ったのに、満更でもなくなってくる。 蓮くんが喜んでくれるなら… まぁいっか 「俺のために、ドレス着てくれる?」 「まぁ…そこまで言うなら、考えないでもないけど…」 でも、やっぱり素直にうんと言うのはちょっと抵抗あるから、答えを濁したけど。 蓮くんはそんな俺の心なんて全部見通してるような、自信満々な顔で頷いた。 「うん。考えといて」 そうして、俺の左手を恭しく取り、指輪にキスをする。 そのまま薬指をパクリと咥えられ、舌でしゃぶられると、それだけで久しぶりのゾクゾクが背中を這い上がってきた。 「っ…ふ…」 薬指だけじゃなくて、全部の指一本一本を丁寧に舐めしゃぶられて。 お腹の奥の方がジンジンと疼く。 「蓮、くっ…」 「…ごめん」 俺の吐息に熱が混ざったのに気がついたのか、慌てて俺から離れようとするから。 俺は離れないように、自分からぎゅっと抱きついた。 「楓…?」 「…あのね…誉さんがね…は、激しくしなきゃ、え、エッチ、し、しても、いい…って…」 その逞しい胸に顔を埋め、恥ずかしさに途切れ途切れになりながら、告げる。 「…そっか」 「うん」 「楓は?したい?」 「…し、した、い…」 「うん。俺も、したい」 小さく頷くと、蓮くんはくすっと笑って、俺のつむじにキスをして。 ゆっくりと、俺を抱き上げた。

ともだちにシェアしよう!