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鳳凰(ほうおう)5 side楓
「なんか…案外あっさりなんだね…」
マンションに戻って、ソファで一息吐きながら。
俺は左手の指輪を、リビングに差し込むオレンジ色の光にかざした。
お父さんの病院の帰り
二人で区役所に寄って婚姻届を提出した
今は別の戸籍とはいえ
俺たちは本当は血の繋がった実の兄弟なわけで
もし受理されなかったらどうしようなんて
ドキドキしながら待ってたら
ものの数分であっさりと受理されて
なんだか拍子抜けしてしまった
「まぁ、役所なんてそんなもんだろ。よかったじゃん、いろいろ聞かれなくて」
「そうなんだけどさ…なんか、結婚したって実感、ゼロっていうか…」
「じゃあ結婚式でもしたら、実感するか?」
「えっ!?結婚式!?」
でも、蓮くんが笑いながら俺を引き寄せ、耳元で囁いた言葉に。
びっくりして、思わず飛び上がりそうになる。
「なに?結婚式、嫌なのか?」
「い、嫌じゃない!ただ、結婚式なんて考えたこともなかったから…」
慌てて言い訳を口にする俺を、蓮くんは笑顔のまま抱き締めた。
「いつか…そうだなぁ…この子たちが生まれて落ち着いたら、二人だけで結婚式、しようか」
「…うん」
「あんまり人のいない、静かな南の島なんかいいな。楓が真っ白いウエディングドレスを着て白い砂浜を歩いたら、震えるほど綺麗だろうなぁ」
「え!?俺、ドレス着るの!?」
「嫌?」
「…蓮くんは、着て欲しいの?俺、男だよ?」
「うん。男だけど、絶対世界一綺麗な花嫁だから」
なぜか自信満々な蓮くんにそう言われると、ドレスなんてちょっと恥ずかしいなって思ったのに、満更でもなくなってくる。
蓮くんが喜んでくれるなら…
まぁいっか
「俺のために、ドレス着てくれる?」
「まぁ…そこまで言うなら、考えないでもないけど…」
でも、やっぱり素直にうんと言うのはちょっと抵抗あるから、答えを濁したけど。
蓮くんはそんな俺の心なんて全部見通してるような、自信満々な顔で頷いた。
「うん。考えといて」
そうして、俺の左手を恭しく取り、指輪にキスをする。
そのまま薬指をパクリと咥えられ、舌でしゃぶられると、それだけで久しぶりのゾクゾクが背中を這い上がってきた。
「っ…ふ…」
薬指だけじゃなくて、全部の指一本一本を丁寧に舐めしゃぶられて。
お腹の奥の方がジンジンと疼く。
「蓮、くっ…」
「…ごめん」
俺の吐息に熱が混ざったのに気がついたのか、慌てて俺から離れようとするから。
俺は離れないように、自分からぎゅっと抱きついた。
「楓…?」
「…あのね…誉さんがね…は、激しくしなきゃ、え、エッチ、し、しても、いい…って…」
その逞しい胸に顔を埋め、恥ずかしさに途切れ途切れになりながら、告げる。
「…そっか」
「うん」
「楓は?したい?」
「…し、した、い…」
「うん。俺も、したい」
小さく頷くと、蓮くんはくすっと笑って、俺のつむじにキスをして。
ゆっくりと、俺を抱き上げた。
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