456 / 566

鳳凰(ほうおう)13 side楓

「け、結婚式っ…!?だ、だって、蓮くんはなにもっ…」 「蓮さんも知りませんよ。だってこれ、うちの従業員が企画したサプライズなので」 「ええっ!?」 びっくりして、回りの女性スタッフを見渡すと、みんな笑顔でうんうんと頷いた。 「蓮さんとヒメさんが結婚するって聞いて、なら絶対このホテルで結婚式やるだろうってみんな期待してたから、私のところにどうしても参列したいって従業員が大勢押し掛けてきて。でも、蓮さんのお父さんのこともありますし、結婚式は暫くやらないか、やっても二人だけで…なんて考えてるんじゃないかって言ったら、ヒメさんの花嫁姿を絶対見たいって、特にΩの従業員が騒いじゃいましてね…なんせ、あなたはうちのΩスタッフ達の憧れですから」 「え…」 「そうですよ!ヒメさんの花嫁姿を支配人が独り占めするなんてズルいです!私たちも、祝福したいですもん!」 和哉の説明に、大きな声で付け加えた女性スタッフの首には、一見スカーフにも見えるオフホワイトの首輪が嵌めてあって。 よく見ると、俺を取り囲んでいる他の女性たちも、首輪をしていたり、うなじに噛み跡がある人ばかり。 「総支配人みたいな、優しくて強いαに愛されるヒメさんは、私たちみんなの希望なんです」 そうだ… ここで働くΩの人たちは みんななにかしらの苦しい過去を背負ってる人たちばかり 俺と同じように… 「だからみんな、ヒメさんと総支配人の結婚をお祝いしたくて…結婚式、挙げてもらえますか?」 少し不安そうに訊ねた彼女に、俺は込み上げそうになる涙を堪えて、笑顔で頷く。 「うん。みんな、ありがとう」 俺の答えに、彼女たちは嬉しそうな歓声を上げて。 その嬉しそうな姿に、俺の心もふんわりと温かくなった。 「じゃあ、早くドレス選びましょう!」 彼女たちに手を引かれ、部屋の奥へと向かう。 そこにはたくさんの純白のウェディングドレスが並んでいて。 「ヒメさんの好きなの、選んでください!」 そう言われたんだけど。 「いや、好きなのって言われても…」 いくつか手に取ってみたけど、結婚式なんてまだ全然考えてなかったし、そもそも俺は男で、ドレスを着る方じゃないし。 まぁ… 蓮くんに言われてちょっとだけ想像はしてみたけどさぁ… 「じゃあ、私たちにお任せください!」 両手を挙げてギブアップの合図を送ると、スタッフのみんなが手慣れた感じでいくつかドレスをピックアップしてくれた。 まるで絵本から出てきたみたいなお姫様っぽい豪華なドレスやら、ミニスカートに後ろ側だけ長いベールのついた可愛いドレスやら、何着も次々に着せられたけど。 「…これかも」 「うん!これがいい!」 最後に着た、スカートのあまり広がってない、前からみたらすごくシンプルな、でも背中側にアクセントに大きなリボンのついたドレスに、みんな一斉に頷く。 「ヒメさんスタイルいいから、こういうシュッとしたシンプルな方がお似合いですね」 それまで黙って見ていた和哉も、組んでた腕をほどいてそう言って。 「きっと、蓮さんデレデレになるでしょうねぇ…楽しみだ」 クックッと、ちょっとだけ意地悪そうな笑い声を立てた。

ともだちにシェアしよう!