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鳳凰(ほうおう)17 side楓

扉の向こう側へ足を踏み入れると、足元には赤い絨毯が引かれてて。 まっすぐに伸びたその絨毯の先には、真っ白いタキシードを着た蓮くんが立っていた。 小さなチャペルいっぱいに入った参列者の人たちに、伊織さんと一緒にお辞儀をして。 伊織さんに手を引かれ、一歩ずつ蓮くんの元へと歩き出す。 「おめでとうございます、ヒメさん!」 入口に一番近いところに座っていたのは、さっき俺の支度を手伝ってくれたΩのスタッフたち。 「ヒメさん!総支配人とお幸せに!」 「ヒメさん、めっちゃ綺麗ですぅっ!」 そして、いつも俺を見守ってくれるフロントスタッフたち。 「おめでとう、柊」 那智さんと誉さん。 「おめでとうございます、柊さん」 志摩と世絆、小夜さん。 「楓、幸せにね!」 「世界一綺麗だぞー!」 春くんと和哉と亮一さんもいて。 大切な、たくさんの人たちの笑顔に包まれて。 俺は、ゆっくりと時間をかけて蓮くんの元へと辿り着いた。 それはまるで 今までの俺の人生のようで… 「さあ…行っておいで」 伊織さんが、俺の背中をそっと押す。 俺は頷いて、伊織さんの腕を離し。 一歩、蓮くんへと近づいた。 白いタキシードの蓮くんは、いつもより更に凛とした佇まいですごくかっこ良くて、ドキドキする。 なのに、どこか硬い表情で、黙ったまま俺をじっと見つめてて。 「や、やっぱ…ドレスなんて、変…だよね…」 その眼差しの鋭さに、気持ちが怯んで。 思わず小さな声でぼそりと呟くと。 蓮くんは、ハッとしたように息を飲み、少し皺の寄った眉間を指先でトントンと叩いて。 ふーっと息を大きく吐き出した。 「変じゃない」 「…うそ」 「嘘じゃない。ごめん、想像の何倍も可愛くて、見とれてた」 「へっ…?」 「それに、ちょっと悔しかった。こんなに可愛くて綺麗な楓、俺が一番に見たかったのに、春海や伊織の方が先に見てるし」 「…そんなこと?」 不機嫌そうに見えた理由が、まさかの想像もしてなかったことで。 思わず呆れた声が出ると、不貞腐れたように口をへの字に曲げる。 「そんなことって、なんだよ」 「だって、このドレス、蓮くんの為に着たんだよ?ホントは恥ずかしくて死にそうだけど、蓮くんが喜んでくれたらいいなって…だから、蓮くん以外の他の誰が見たって、俺にとっては意味がないんだよ?」 蓮くんのためだけに 俺はここにいるんだから そう告げると、蓮くんは一瞬だけ目を丸くして。 それから嬉しそうに、ふわりと微笑んだ。 「ああ、わかってる。誰よりも愛おしい、俺だけの花嫁」 ゆっくりと、右手を差し出す。 俺も微笑みを返しながら、誰よりも愛しい旦那様の手をぎゅっと握った。

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