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番外編 Robin(ロビン)6 side蓮
家に帰ると、キッチンにはクリームシチューとローストチキンが用意されていた。
「これ、楓が自分で?」
「うん。この間テレビ見てたとき作り方やってて、これなら出来そうかなって。最近蓮くん忙しそうだったし、家でゆっくり過ごすクリスマスもいいかなって思ってたんだ」
「ありがとう。ごめん、俺なにも考えてなくて…」
「謝らないでよ。俺が、蓮くんのために作りたかっただけだから。さ、座って座って。お腹空いたでしょ?」
その用意の良さに、楓はきっとクリスマスを楽しみにしててくれたんだろうってわかって。
仕事を言い訳にしてなにも考えてなかったことに落ち込んだ俺を、楓は笑顔で宥めてくれた。
「いや、俺も手伝うよ。それくらいはさせて?」
「そう?じゃあ、シチュー温めるから、蓮くんはお皿出してくれる?」
「わかった。あ、そうだ。前に社長にもらったスゲーいいワインがあったんだった。あれ、開けようか」
「いいの?」
「ああ。こういう時に飲まないで、いつ飲むんだ!」
「ふふっ…じゃあ、お願い」
ひどく楽しそうな楓の笑顔を曇らせたくはなくて、気持ちを切り替える。
二人で並んでキッチンに立ち、何気ない会話を交わしながら用意をする。
たったそれだけのことが。
今日はとても尊くて愛おしい時間に感じた。
「それじゃ…メリークリスマス」
「メリークリスマス」
楓が心を込めて作ってくれた料理を並べ、ワインの入ったグラスを重ねて、乾杯する。
一口ワインを飲んだ楓は、ふんわりと柔らかく微笑んで。
「あ、そうだ」
なにかを思い立ったように、席を立ち。
部屋の隅から小さな袋を持って戻ってきた。
「これ…そんなにたいしたものじゃないけど…クリスマスプレゼント」
「え…あ、ありがとう」
差し出されたそれを受けとると、楓はまた俺の横に座ってぴったりと身体を寄せてくる。
「開けてもいい?」
「うん」
少し恥ずかしそうに赤く染まった頬を横目に見つつ、綺麗にラッピングされたその包みを開くと、紺地に銀色の小さな星が散りばめられたネクタイが現れた。
「…ありがとう。嬉しいよ」
「ほんと?」
「うん。早速明日着けていくよ」
そう言うと、本当に嬉しそうに頷く。
「ごめんな。俺、プレゼントも用意できなくて…」
「ううん、いいの。俺はもう、一番欲しいものをもらってるから」
申し訳なさに、頭を下げると。
楓は笑顔のまま、首を横に振った。
「え…?一番欲しいもの…?」
なにをあげたっけ…?
「うん。欲しくて欲しくて仕方なくて、でももう絶対に手に入らないと思ってた」
記憶を掘り起こしていると、頬に柔らかい唇の感触が当たる。
「俺の一番大切な宝物」
楓はそう言って。
今度は俺の唇にキスをした。
「楓…」
少し潤んだ瞳の、でも幸せそうな微笑みに。
胸の奥がじわりと熱くなる。
「俺もだよ。俺の一番欲しかった大切な宝物は楓だ」
お返しにと、キスをこちらから仕掛けると。
楓は強く、俺に抱きついてきた。
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