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番外編 鷦鷯(ミソサザイ)4 side和哉

って、折角珍しく素直になってやったっていうのに。 「ほぇ…?」 春は、ますます口を開けてバカ丸出しの顔で、フリーズした。 そのあまりのマヌケ面に、無性に怒りが沸いてきて。 ポカンと開いた口を、思いっきり指でつねってやる。 「んんーーーーーっ!!!」 「なんだ、そのアホ面」 「ひっど!なにもつねることないじゃん!」 「しょうがないだろ。ムカついたんだから」 「ムカ…!?ひっど!ますます、ひっど!」 「うるさい、アホ春。俺の折角の告白に、アホ面で応えんな」 そう言うと、春は一瞬言葉に詰まって。 それから今度はにへら~とあり得ないくらいニヤケた顔になった。 忙しいやつ… 「その顔、ぶさ…」 「今の、ホント?その…俺のことが好きだって」 あまりにも不細工な顔に、またしても文句言ってやろうとしたら、言葉を被せられる。 「…そんなこと、嘘言うわけないだろ」 素直な気持ちを疑われたことに、ちょっとムッとした表情を作ると、さらに顔が溶けたアイスみたいに崩れて。 いやーな予感がして慌ててその場を離れようと踵を返した瞬間、息が止まるくらいの強さで後ろから抱き締められた。 「ぐぇっ…!」 「ねぇねぇ、もっかい言って!」 「はぁ?やだよっ!」 「え~いいじゃん!減るもんじゃないし!」 「減るわ!ってか、離せ馬鹿力!苦しいんだよ!」 「やーだ!もう一回言うまで、離さない!」 ぎゅうぎゅうと。 抱き締めるというより、まるでプロレス技を掛けられてるみたいな状態に。 このままだと、マジで死ぬ…! 恐怖に襲われた俺は、慌てて口を開く。 「っ…好き!おまえのことが好きだ!だから、離せっ…!」 詰まる息を無理やり吐き出しながら、叫ぶと。 ふっと春の腕が緩んだ。 「…俺も、かずが大好きだよ」 ようやく入ってきた酸素を大きく取り込むように息を吸ってると、耳元で甘い声が響いて。 ドクンっと心臓が大きく跳ねる。 「好き。大好き」 「わかった」 「世界で一番好き」 「わかったから…もうやめろ」 なんの飾りもない、でも真っ直ぐで正直な愛の言葉に、嬉しいというよりもむず痒さの方が全身を包んで。 思わず身を捩った瞬間、耳をかぷっと甘噛みされて。 「ひゃぁっ…」 飛び上がった。 「ふふっ…かずの耳、真っ赤だよ?可愛い」 「う、うるさいっ…」 「もしかして、耳、感じるの?」 楽しげに弾んだ声で、何度も何度も耳にキスされて。 少しずつ、むず痒さが甘い痺れに変わる。 「もう、やめっ…」 それを振り払おうと、顔を捻ったら。 ひどく真剣で、熱っぽい眼差しが、俺を突き刺した。 その瞳に 縛られる 「…好きだよ、かず」 春の顔が少しずつ近付いてきて。 熱い吐息が鼻先を掠めた瞬間、目蓋を下ろすと。 熱い唇が、そっと触れた

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