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番外編 朱嘴鸛(シュバシコウ)7 side蓮

ひどい空腹感に、目が覚めた。 ほんのりと明るい部屋で、時間を確認しようと枕元に置いたはずの携帯を手探りで手繰り寄せて。 「え…マジか…」 そこに表示された日付を確認し、思わず声が出た。 楓のヒートが始まって既に3日が経っていた。 今までは、翌日には一旦落ち着いて、楓に軽くなにか食べさせることも出来てたのに。 俺も久しぶりのヒートに正気を失ってたってことか… ベッドの下を見渡すと、辺り一面に散らばった俺の服に混じって、飲んだ覚えのない空のペットボトルやゼリー飲料のゴミが散乱してる。 一応、最低限の栄養は取ってたことに少しだけ安堵しつつ、気怠い身体を無理やり起こし。 俺のシャツを身に纏って健やかな寝息を立てている楓を起こさないように、そっとベッドを降りた。 とりあえず、なにかさっと食べられるものを作ろうとキッチンへと足を向けた時、不意に志摩くんの言葉が頭に浮かんだ。 『龍さんが食料買い出しして、後で下の宅配ボックスに入れておくって言ってました』 慌ててメールを確認すると、二日前に龍からメッセージが届いている。 「やべ…入れっぱじゃん」 落ちていた服を適当に着て、急いでエントランスへ向かい、指定されたボックスに入っていたビニール袋を取り出した。 その場で中身を確認すると、大量のレトルトのお粥とプロテインバー、スナック菓子と栄養ドリンクが入っている。 「おい…これだけか…」 ついつい、大きな溜め息が漏れた。 これじゃ、腹一杯になんねぇし、栄養も足りねぇだろっ! しょうがねぇかぁ… あいつ、なんだかんだいっても世間知らずのボンボンだからな… ま、気を遣ってくれたことには素直にありがとうと言っとくか… とりあえずの空腹感を満たすために、プロテインバーを齧りつつ、部屋へ戻るためにエレベーターに乗り込む。 いつものようにネットスーパーを使うかな、なんて考えながら玄関のドアを開けると。 「れんくんっ!」 涙で顔をぐしゃぐしゃにした楓が、靴を履こうとしてた。 素肌に俺のシャツを引っ掛けただけの姿で 「え、ちょっ…」 「どこいってたのぉっ…!」 体当たりするように強く抱きついてきた身体は、震えていて。 俺は持っていた荷物をその場に落とすと、包み込むようにそっと抱き締め返す。 「ごめん」 「いなく、なっちゃったかと、おもった…」 「いなくならないよ。ずっと側にいる。約束しただろ?」 ほろほろと溢れる宝石のような涙を唇で拭い。 宥めるように何度も何度も唇や頬にキスを落としてやると、甘えるように俺の首筋に顔を寄せ、ようやくほぅっと安心しきった吐息を溢した。 「びっくりさせて、ごめんな」 「ううん…でも、ずっとここにいてくれなきゃ、やだ…」 「うん、ごめん。もう離れないから」 そう誓って、もう一度しっとりと長いキスを落とすと。 楓はふわりと幸せそうに笑った。

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