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番外編 朱嘴鸛(シュバシコウ)9 side蓮

「蓮くん!起きてっ!」 耳元で響いた大きな声で、起こされた。 「ん~…?なに…?」 「凪と櫂はっ!?どこにいるのっ!?」 目蓋を持ち上げると、目の前には焦った顔の楓。 …なんだ… ヒート終わっちゃったのか… 「おはよ、楓」 浮かんだ、ほんの少しだけ残念な気持ちのまま、楓の頭を引き寄せてキスをして。 枕元に放り投げてあったスマホで日にちを確認すると、ヒートが始まってから6日目の朝。 あれ…? いつもより1日早いな… 「おはよ…って、そうじゃなくて!凪と櫂は!?」 「大丈夫だよ。龍と志摩くんが預かってくれてる。お利口さんに遊んでるってさ」 今度は怒った顔になった楓を宥めるために、もう一度キスをして。 スマホのアルバムから、昨日龍から送られてきていた写真を開いた。 そこには、世絆と一緒に川の字で並んでお昼寝している双子の姿が写っている。 「え…?龍が…?」 「そう。約束してたんだよ。ヒートが始まったら、お互いの子どもを預かるって」 画面をスライドすると、今度は三人で円を描くように座って、きゃっきゃと楽しげな声を上げながらおもちゃで遊んでいる動画が流れた。 もう一度スライドすると、今度は仲良く三人並んで食事をしている風景。 凪と櫂は離乳食を志摩くんが食べさせてくれていて、世絆はシチューのようなものを自分でスプーンを持って食べている。 「風呂は、毎日龍が入れてるってさ。すっかり懐いて楽しそうに入ってるって言ってたよ」 楓はそれを食い入るように見つめて、ようやくほぅっと安心したように息を吐いた。 「そっか…よかった」 落ち着いたか…と思ったのも束の間。 楓は勢いよくベッドを降りると、クローゼットへ向かう。 「え?楓?」 「早く迎えにいってあげなきゃ」 自分の服を出して身に着けようとするのを、後ろから抱き締めて阻止した。 「蓮くん?」 「まだいいだろ。志摩くん、明日まで預かってくれるって言ってたし」 「でもっ…」 「これ、片付けないと連れて帰ってこれないよ?」 床に散らばっている大量の、汚れた俺の服を指差すと、ぐっと言葉に詰まる。 「い、急いで洗濯するからっ…」 「それにさ。もう1日だけ、二人だけでゆっくり過ごしたい。こんなこと、滅多にないだろ?俺、誰にも邪魔されずに楓とじっくりイチャイチャしたいんだけど」 耳元に息を吹き込みながら少し低い声を出すと、ぴくんと震えて動きを止めた。 「駄目?楓は、俺と二人でゆっくりイチャイチャしたくない?」 逡巡するように揺れる瞳を見ながら、もう一押しと耳朶を甘噛みしてやると。 おずおずと俺と視線を合わせて。 「え、エッチはもう、しないから、ね…?」 小さな声で、そう言った。

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