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番外編 朱嘴鸛(シュバシコウ)11 side蓮
「ふにゃーーー!」
「ふぎゃーーー!」
「ごめんねぇ、二人とも」
楓の顔を見た途端、凪と櫂は大声で泣き出して。
二人を抱き上げた楓は、もうすっかりいつもの母親の顔で、自分にしがみついて泣く二人を愛おしげに見つめた。
「帰ったら、いっぱい甘やかしてあげてくださいね。双子ちゃんたち、この一週間いいこで頑張ってたから」
二人につられたのか、ぐずぐずと泣き出した世絆を抱っこしながら、志摩くんが優しく微笑む。
「うん。本当にありがとう、志摩。助かったよ」
「いいえ。僕も、ヒートが来たら柊さんに世絆をお願いするので、お互い様です」
「うん。その時は、任せといて」
そう言って志摩くんに微笑み返した楓は、部屋の隅で遠巻きに俺たちを見ていた龍へと視線を移した。
「龍も…ありがとね」
「えっ…あ、いや、俺は別になにも…」
まっすぐに向けられた眼差しに、龍が動揺したようにあたふたすると。
楓はふわりと微笑む。
「この子達のお風呂、毎日龍が入れてくれてたんでしょ?本当にありがとう」
その微笑みには、もうなんの暗い影も見えなくて。
「あ…うん…そんな、大したことじゃないし…世絆を入れる、ついでだったし、さ…」
龍もそれを感じたのか、照れ臭そうにしながらも、どこか嬉しそうに頬を緩ませた。
「でも、兄弟っていいですね。櫂くんと凪くん、本当に仲良しで…二人でいたから、柊さんがいない寂しさも、ちょっとは紛れたのかも」
その二人の顔を交互に見つめながら、志摩くんは満面の笑みで龍の側に寄り添う。
「…じゃあ、世絆にも早く兄弟作ってやるか」
隣に立った志摩くんの腰を抱いて引き寄せながら、龍が囁くと。
途端、志摩くんは耳まで真っ赤になった。
「え!?いや、それは、そのっ…」
「なに?嫌なの?」
「い、嫌とか、そんなんじゃないけどっ…だ、だってまだ、ヒートきてないしっ…」
「じゃあ、次のヒート来たら…いいだろ?」
「ええっ…」
照れまくる志摩くんと、それを本当に愛おしそうに見つめる龍と、二人の間に挟まれて不思議そうに顔を見比べている世絆と。
幸せそうな三人の姿に、胸の奥がじんとして。
楓を見ると、同じタイミングで俺を振り向き、嬉しそうに笑った。
「じゃあ…帰ろうか」
「うん」
「本当にありがとう。お世話になりました」
「またいつでも、遊びにきてくださいね。子どもたち、すっかり仲良くなったし…ヒートじゃなくても、いつでも」
二人で頭を下げると、志摩くんが優しい声でそう言ってくれて。
龍も、うんうんと何度も頷いて。
「…うん、ありがとう。また遊びに来るね」
楓が、笑顔でそれに答えて。
この場にいるみんなが笑顔で
もう見ることはないのかもしれないと思っていた景色が
今確かにここにある
「それじゃあ、また」
「はい!また!」
温かな気持ちを抱いて、九条の家を後にした。
「凪、俺が抱っこするよ」
「大丈夫。だって、ほら…」
車へと向かいながら、凪を受け取ろうと手を伸ばすと、楓は小さく首を横に振る。
その腕の中を覗き込むと、いつの間にか微睡んでいる双子が。
「…ママの腕の中で、安心したんだな、きっと」
目を瞑ってる二人の口元は、微かに緩んでいるように見えて。
二人を見つめる楓は、慈愛に満ちた天使のような微笑みを浮かべていて。
二人きりで過ごす日々も楽しかったけど
やっぱりこうやって家族4人でいるのが一番いい
「…帰ろう。俺たちの、家に」
そっと双子の頭を撫で、それから楓のこめかみに触れるだけのキスを落とすと。
楓は嬉しそうに笑って、頷いた。
END
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