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番外編 鴎(かもめ)14 side志摩
「え?なんだって!?」
「だから、柊さんと蓮さんって似てるよねって。昔から似てた?」
蓮さんにおすすめされたフレンチレストランでディナーを取り。
部屋に戻って二人でお風呂に浸かりながら、昼間思ったことを龍さんに聞いてみると。
僕を後ろから抱っこしてた龍さんは、僕の顔を覗き込んで、恐ろしいものでも見たみたいに大きく目を見開いた。
「誰と誰が似てるって?」
「だからぁ、しゅ…楓さんと蓮さん」
「いや、似てないだろ!つか、全然似てないし!」
「え?そお?僕は似てると思ったけどなぁ…なんか、柔らかい雰囲気とか」
「柔らかい!?誰が!?」
「だから、楓さんと蓮さんだってば」
「志摩…おまえは騙されてる…」
「え?誰に?」
「兄さんだよ!志摩は知らないんだろうけど、あの人ほど敵に回したら恐ろしい人はいないから!」
そう叫んで、蓮さんの怖い話をしてくれたんだけど。
小学生の時、楓さんの悪口言った人を再起不能になるまで言い負かしたとか。
中学生の時、楓さんをいじめようとしてた人を逆に孤立するように仕向けたとか。
高校生の時、楓さんに向かって酷いことを言った人を転校させたとか。
その他もいろいろあったけど、全部楓さん絡みの話ばかりで。
「ほぇぇ…すごいね」
つい、感嘆の声が出ちゃった。
「だろ!?」
「うん。蓮さんって、ずーっと楓さんのヒーローだったってことでしょ?」
「え…?」
僕の言葉に、龍さんがまたびっくりした顔をする。
「ずーっとずーっと楓さんのことを思って、楓さんを守ってたってことでしょ?あ、守ってた、じゃなくて今でも守ってるんだよね。すごいなぁ、素敵だなぁ」
「え…え…?それ、素敵、なのか…?」
納得したような、そうでもないような。
曖昧な返事をした後、なぜか苦笑いを浮かべた。
「確かに…兄さんの中にはずっと、楓しかいなかったからな。楓がうちに来たときから…運命の番だってわかるずっと前から、兄さんは楓のことだけ考えて、楓のことを全身全霊で守ってた。そんなの…敵うわけないよな…」
少し寂しそうな声でそう言って。
次の瞬間、僕をぎゅーっと強い力で抱き締める。
「りゅ、龍さんっ!?」
「じゃあ、俺は?」
「へっ?」
突然のことに、びっくりして顔だけ振り向くと。
龍さんはいたずらっ子みたいにニカッと笑った。
「俺は…志摩のヒーローになれるかな?」
まっすぐな、情熱的な眼差しが僕を突き刺す。
その熱が、僕の身体を熱くして。
先月付けてくれたばかりのうなじの噛み跡を疼かせた。
「そんなの…とっくにヒーローだよ」
出会ったあの時から
強くてかっこよくて優しい
僕だけのヒーロー
「これまでも、これからも。僕のヒーローは龍さんだけだよ」
僕の言葉に、龍さんは嬉しそうに笑って。
蕩けるような、あまーいキスをくれた。
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