546 / 566

番外編 鴎(かもめ)21 side蓮

俺だってわかってる 自分が矛盾してるってこと そもそもあいつらに楓を会わせようとしたのは俺だし 楓が親戚連中と仲良くなったらいいなと思ってるのも本当だ 楓が楓の思うままに生きていって欲しいって気持ちに嘘はない でも そうやって楓の世界が広がっていくごとに 心の中にモヤモヤしたものが少しずつ塵のように溜まっていく 本当は俺は 楓をずっと自分の腕の中に閉じ込めておきたいんだ 決して誰にも見せず 俺だけが愛でられる美しい華のように その微笑みを俺だけに向けて欲しい そんなこと出来るわけがないし 決して口に出してはいけないとわかっているけど…… 薄暗い感情に突き動かされるまま、楓をソファの上に寝かせ、早急に服を脱がせる。 楓は驚いた顔で俺を見つめていたけど、俺の手がズボンにかかった瞬間、そっと俺の頬に手を添えた。 その少しヒヤリとした感触に、一気に頭に上っていた血が下がる。 「…っ…楓っ…」 「いいよ、好きにして」 透き通るような眼差しは、俺の真っ黒な心の奥底まで見透かしているようで。 「俺の全部…この細胞の一つまで、全部蓮くんのものだから。だから、蓮くんの好きにしていいから…」 それなのに。 俺の醜い部分に気がついているはずなのに 楓は全てを許す聖母のように微笑んだ。 「…楓…」 そうして、両手で俺の頬を包み込み、引き寄せ。 しっとりと、唇を重ねる。 重なった唇の甘さに、ささくれだった心が静かに凪いでいくのを感じて。 同時に、子どもっぽい嫉妬心に支配されたことへの恥ずかしさが急激に沸き上がってきた。 「…ごめん」 楓の無垢な眼差しに耐えられなくて、その華奢な肩に顔を埋める。 「なにが?」 「ごめん」 謝ることしか出来ない俺に、楓はくすっと小さく笑って。 「もしかして…俺が翔さんたちと仲良くしてるの、嫌だった?」 ズバリと確信を突いてきた。 「…いや…そんなんじゃ、なくて…」 「じゃあ、なに?」 「それは、その…」 素直に認めることが出来ない俺に、楓はまた笑って。 包み込むように、俺の背中を抱き締める。 「よかったぁ…俺だけじゃなくて」 そうして、ひどく明るい声で、そう言った。 「え…?」 「俺さぁ、翔さんや満くんやみんなが寄って集って蓮くんの周りを取り囲むからさぁ…なんか、ちょっとムッとしちゃったんだよね。俺の蓮くんなのにって。でも、そんな子どもっぽい嫉妬なんて俺だけだと思ってたから…蓮くんも一緒なら、俺、ちょっと嬉しい」 驚いて顔を上げると、楓はやっぱり聖母のような微笑みを浮かべていて。 「ねぇ…早く、シよ?俺は蓮くんだけのものなんだって、早く感じたい。身体も心も、蓮くんでいっぱいに満たしてよ」 その清廉な眼差しのまま、愛欲の泉へと俺を誘った。

ともだちにシェアしよう!