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番外編 鴎(かもめ)22 side楓

昔から 蓮くんの周りには人が絶えなかった そりゃあ 蓮くんは誰よりもカッコいいし 頭いいし 優しいし 頼りになるし みんなが放っとかないのはわかるけど 時々、蓮くんは俺のだから!って叫びたい衝動に駆られる時がある 今日だって 翔さんたちは俺に会いたいって言ってたらしいけど 挨拶した後は蓮くんとばっかり話してたし 披露宴の時なんて 那智さんが隣を陣取ってずーっとなんかしゃべってたし 蓮くんが俺じゃない誰かに笑いかける度 モヤモヤしたものが俺の心を覆い尽くすんだ そんな子どもっぽい嫉妬心 絶対蓮くんには言えないって思ってたけど… 「っ、はぁっ…蓮くん、すきっ…」 ぽたりと落ちてきた汗が、肌の上を滑って。 俺の中に染み込んでいく。 「もっと…もっと、おくっ…きてっ…蓮くんでいっばいにしてっ…」 焦らすように浅い部分を擦られて。 もどかしさに堪らず強請ると、蓮くんが熱い吐息を吐いた。 「あんま、煽んなって…!」 「だってっ…ほしいもんっ…」 どれだけ繋がっても足りない もっともっとひとつになりたい 俺のなか全部 蓮くんで満たして欲しい 瞬間、蓮くんの逞しい腕が、俺を強く抱き締めて。 「俺も、楓を愛してるよ」 耳元で響いた艶やかな低音ボイスに、ふるっと身体が震えて。 次の瞬間、一気に奥まで入ってきた熱い楔に、爪先から頭の天辺までものすごい快感が突き抜けていった。 「はっ…ぁっ…まっ、てっ…まだイってる、からぁっ…」 放出の余韻に浸る間もなく、奥を突かれて。 あっという間に、また快感の大きな波に飲み込まれる。 「あっ…あっ…ダメっ…また、イっちゃうっ…」 「いいよ、何度でも。俺だけしか知らない楓、見せて?」 甘く囁く声に。 俺のなかを激しく貪る熱に。 幸せでいっぱいに満たされて 「あ、ぁ、ぁ…や、ぁっ…イクぅっ…」 俺はまた、精を吐き出した。 狭いソファの上、落っこちないようにぴったり抱き合って、甘い余韻に浸りながら。 蓮くんは何度も何度も俺の頭を撫でた。 くすぐったくて、ちょっとだけ気恥ずかしくて。 でも、すごく幸せで。 俺はさらに強く蓮くんに抱きついた。 「ねぇ、蓮くん…」 「ん?」 「志摩がね、俺と蓮くんが似てるって言ってたんだ」 「え?そうか?」 ぽそっと言うと、蓮くんがちょっとだけ身体を離して、驚いた顔で俺を覗き込む。 「うん。俺もそう思ったんだけどね。でも、似てたかも。嫉妬深いとことか。でもそれを言い出せずにモヤモヤしちゃうとことか」 「それは…」 なにかを言いかけて、でもすぐに言葉を飲み込むように口を引き結んだ蓮くんは、どこか気まずそうに目を逸らした。 その反応がなんか可愛くて、思わず笑ってしまう。 ねぇ蓮くん ホントのホントはね 俺、籠の鳥になっても全然かまわないんだよ 君が心からそれを望むのなら だってこの命は 蓮くんと子どもたちのためだけにあるんだから でも 俺が蓮くんに自分だけを見て欲しいと思いながらも みんなと楽しそうに話したり 真剣に仕事してたり 俺と二人だけの時には見れないいろんな表情を見るたびに キュンキュンしたり ドキドキしたり 今までよりももっと好きになっていくのと同じように いろんな人と交わったり ピアノを弾いてたりする俺に 蓮くんもきっと二人だけの時とは違う愛おしさを感じてくれてるんじゃないのかな? 違うかな? 「…今度から、モヤモヤする前に俺に言うんだぞ?」 「あ…話、摩り替えた」 「っ…違う」 「じゃあ、蓮くんも嫌だと思ったらそう言ってね?」 「……」 「なんで無言なんだよ」 だからね これからも二人でしっかり手を繋いで いろんな世界を見に行けたらいいなって そう思うんだ 「まぁ、とりあえず…翔や満には俺の方から連絡しておくから」 「うん。よろしくね」 目を泳がせながら、澄ました顔で言うのが可笑しくて。 ついついまた、笑ってしまうと。 蓮くんから噛みつくような熱いキスが降ってきた。 End

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