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超番外編 雀鷹(ツミ)9 side櫂
「出会う確率がめちゃくちゃ低いはずの運命の番が従兄弟なんてさ、めちゃくちゃドラマチックだよな。同じ番っていってもさ、俺んちの親と蓮伯父さんたちってなんか違うっていうか…絆の深さ、みたいなもんがさ、違う気がするんだよな。だから俺も、いつか絶対運命の番を見つけ出して、その人だけを全力で大切にして守っていきたい。蓮伯父さんみたいにさ」
キラキラと瞳を輝かせて話す世絆の声に、モヤモヤしたものが大きくなっていく。
「…そうかな…」
「え?」
確かに、パパとママはすごく愛し合ってると思う
それは俺も凪も痛いほど感じてる
でも
自分の為に引かれたレールを外れてでも
確かにあるはずだった未来を全て投げ捨ててでも
ママの手を取ったはずなのに
どうしてママの左腕にはあんなに沢山の傷痕があるの?
どうしてママは那智さんの店で働いてたの?
どうしてママは心臓を悪くするまで人体実験に参加しなくちゃならなかったの?
パパは本当に
ママのことを全力で守ってたの…?
運命の番って、なんなんだろう…?
「…櫂?どうした?」
肩を強く揺さぶられて。
思考の底から我に返った。
「なんだよ、急に黙り込んじゃって。俺、なんか変なこと言ったか?」
「あ、いや…なんでもない」
眉を潜めた世絆に、慌てて首を横に振る。
「つか、おまえの運命の番は、凪じゃないけどな」
パパとママのことを世絆に話す訳にはいかなくて、さりげなく話題を逸らしてみた。
「っ…そ、そんなこと、まだわかんないじゃないか!」
途端、世絆は耳まで真っ赤になる。
わかりやす…
「わかるだろ。だって運命の番って、出会った瞬間にわかるっていうのが定説だろ。おまえ、凪になんか感じた?」
「し、仕方ないじゃん!赤ちゃんの頃からずーっと知ってるんだから!」
「だから、違うんだろ」
「そんなのわかんないだろ!だって、蓮伯父さんだって、楓さんのヒートが来るまでわかんなかったって言ってたし!」
「パパとママは特殊事例だよ。運命の番が従兄弟にいるなんて、普通ありえないから。そんな話、他に聞いたことあるか?」
わざと訊ねると、世絆は不貞腐れたみたいに唇を尖らせて黙り込んだ。
「…まぁ、おまえの運命の番はこの世界のどっかに絶対いるからさ。せいぜい頑張って探してくれ。凪のことは、俺に任せてな」
肩をポンと叩いた瞬間、電車がホームに滑り込んできて。
「…やっぱおまえ、ブラコン…」
騒がしい電車の音に紛れて、世絆の小さな声が聞こえた。
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