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超番外編 雀鷹(ツミ)13 side櫂

「ちょっ…なぁに?痛いよ」 「俺が、守るから。凪のことは俺がこれからもずっと守っていく。だから、なんも心配しなくていいからな」 腕の中でもぞもぞと動く凪を、更に強く抱き込んでそう言うと。 凪はピタリと動きを止め、しばらく考え込むようにじっとした後。 真綿を包むような優しさで、俺をそっと抱き締め返してきた。 「うん、ありがと」 「俺が、誰よりも幸せにする」 「ふふっ…そうなの?僕たち、兄弟だけど?」 「そうだけど、別に番になることが一番幸せってわけじゃないんじゃない?凪が好きなこと、好きな食べ物、凪のいいとこ、俺が一番知ってる。だから、凪のことを一番幸せに出来るのは俺だろ」 「…なるほど」 強く断言すると、コロコロと鈴が鳴るような軽やかな笑い声を立てる。 「ありがと。嬉しいよ」 「おう」 「いつか、櫂に運命の番が現れても、今の言葉は忘れないから」 「…そんなのいらないし」 運命の番なんていらない 俺には凪がいればそれでいい 「…うん。僕も、櫂がいればいいよ」 ポツリと小さく呟いて。 凪は俺の胸に顔を埋めた。 そのまま抱き合って、お互いの体温を感じてたけど。 やがて、凪が顔を上げ、眉を下げる。 「…っていうか、僕たちなにやってんの?」 少し赤い顔で、そう言われて。 はっと我に返った。 「…確かに。なんで、抱き合ってんだ?」 「知らないよっ!先に僕を抱き締めたのは、櫂じゃん」 「そうだった」 ぱ、と手を離すと、凪はゆっくりと俺の腕を抜け出し、くるりと背中を向ける。 「ほ、ほら、櫂も早く荷物片付けなよ。宿題、あるんじゃないの?」 「そうだった」 若干焦った声で、早口で捲し立てる凪が可愛くて。 笑いを噛み殺しながら、荷物を開けた。 パジャマと部屋着を取り出して整理し、明日使う教科書を揃えようとしたところで、それに気付く。 「…あれ?」 「ん?どうしたの?」 「…明日提出の数学のプリント、忘れてきた…」 やべ… あれ出さないと呼び出しくらうじゃん… 「ちょっと、家行って取ってくるわ」 「ええっ!?」 立ち上がった俺の手を、凪が強く握って引き留めた。 「やめなよ。今はダメだって」 「んなこと言ったって、あのプリント出さないと牧原先生めんどくさいじゃん。凪だってわかるだろ?」 「そうだけど…」 「大丈夫。自分の部屋だけにしか、入らないし」 「えぇ…」 「今日はママ一人だしさ。絶対、ママたちの部屋には近付かないから」 強く言い聞かせて。 握っている手をそっと解き、立ち上がる。 「ホントに、すぐ戻ってきてよ?」 「わかってるって」 それでもまだ不安そうな表情の凪の頭をそっと撫でて、俺は部屋を飛び出した。

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