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超番外編 雀鷹(ツミ)18 side櫂

あの日から なんかちょっとパパとママを見る目が変わった あの夜のママは 誰よりも綺麗で そして誰よりも幸せそうだった 過去に二人になにがあったとしても 今二人はすごく愛し合ってて 本当に幸せなんだって 理屈ではわかっていたことが 本当にわかった気がする ママにはパパが必要で パパにはママが必要で それは決して他の誰とも代えのきかない 唯一無二の存在なんだってこと 運命の番って、なんなんだろ… 俺にもいつか 誰よりも大切な人が現れるんだろうか 俺だけの、Ωが……… 「じゃあ、二人ともごめんね。カレー作ってあるから、温めて食べてね。戸締まりも、ちゃんとするんだよ?」 「大丈夫。もう、子どもじゃないんだからさ」 「うんうん。パパと、楽しんできて!」 「楓っ!もう出るぞ!」 「ほら、パパが呼んでるから早く行ったら?」 「うん…ホントに気を付けてね?なにかあったら、すぐ連絡してね?困ったら、すぐに志摩に相談するんだよ?」 「大丈夫だってば!はい、いってらっしゃい!」 まだ不安そうなママの背中を二人で押して。 後ろ髪を引かれるように何度も振り返りながら車に向かう姿に、俺と凪は満面の笑みで手を振る。 今日からパパとママは二泊三日で温泉旅行に出かける 一応名目は、ここんとこ仕事が忙しくて、家のことや俺たちのことを任せっきりだったママへの慰労旅行ってことみたいだけど… 「…絶対、パパがママと二人っきりでゆっくりしたかっただけだよなぁ…」 「くふふっ…いいじゃん。そういうパパ、可愛い」 「そうかぁ?」 わざわざ助手席のドアを開けてママをエスコートするパパのどこか楽しそうな横顔を見ながら。 凪は楽しそうに笑って、俺は溜め息を吐いた。 ヒートの時だってママのこと独り占めしてたのに それでも足りないんかよ… 「…αの独占欲って、こわ…」 「え?なに?」 「なんでもない。あ、ほら、ママが手ぇ振ってるぞ」 「あ、ママー!いってらっしゃーい!」 「明日、寝坊しないようにね!」 「大丈夫!楽しんできて!」 窓から顔を出して何度もこっちを振り返るママに、大きく手を振って。 車が見えなくなると、二人で顔を見合わせる。 「行っちゃったね…」 「ああ…」 「さてと…これからどうする?カレーは夜食べるとして、昼飯、なんか食べに行く?お金多めにもらってるし」 ほんの少しだけ感じる寂しさを振り切るように、そう言うと。 凪は、ぱっと表情を明るくした。 「あ、じゃあついでに買い物したい。新しい楽譜が欲しいんだ。CDも探したいし…」 「じゃあ、渋谷まで出るか。俺も、新しいシューズ欲しいかも」 「いいね」 頷いた凪に手を差し出すと、戸惑いなくそれを握ってきたから。 俺たちは手を繋いだまま、駅へと歩き出した。

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