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嘘つき_5
それから作業を終えるまでは終始無言が続いた。
手を止めたのは一時間後、時計は十九時半を指していた。
一息ついて体を伸ばすと、周藤がスマホから視線を移す。
「終わった?」
「ああ、ごめん。あとは片付けて終わり」
「ん。それ、ファイルにまとめる?」
「うん」
僕の返事に周藤は立ち上がり、書類をまとめていく。
「あ、ありがとう……」
「いいって。結局俺、何も出来なかったし。これぐらいやらせて。金崎は帰り支度していいから」
ここはお言葉に甘えて頼むことにしよう。
PCの電源を落として、帰り支度を始める。
コートを羽織る頃、周藤も書類のファイリングを終えた。
「これ、どこ置いとく?」
「そこのデスクに置いておいてくれ」
「りょーかい」
周藤は言った通りファイルをデスクに置いて、僕らは並んでオフィスを後にする。
「待たせて悪かった。今日は僕が奢るから」
「別にいいよ。俺が勝手に待ってたし。それより、どこ行こうか?」
「どこでもいいよ。周藤の好きにしてくれ」
正直、あまり外食には出歩かないので店を知らない。
交友関係が広い方ではないし、一人で行く気にもなれないので、いつもは出来合いの弁当などを買って食べるばかりだ。
「そっか、じゃあ駅近くにしよう。この間見つけた店、ちょっと行ってみたくてさ」
周藤の提案に了承の返事をして、駅までの道を他愛無い会話をしながら歩く。
周藤の話はいつも面白い。
話題も話のテンポも相手に合わせられる、さすが営業部のエースだと毎回感心する。
「――んで、その続編がさ…………金崎、どうした?」
「え……?」
「顔、ジッと見てたから」
「あ、いや……何でもない。それでその続編が何だって?」
「ああ、来月二年振りに公開すんだよ。俺絶対観に行こうと思って――」
好きな事になるとこうして少し饒舌になって屈託なく笑う。
それをこんな近くで見られる僕は、きっと贅沢だ。
そう思わなければ。
望んではいけない。これが僕の……。
これ以上の幸せなんて、ない。
「――かーねーざーきー?またボーッとしてるぞーぉ」
「あ…………悪い」
「いいけど、やっぱ疲れてる?無理はしなくていいぞ?」
「平気だ。待たせておいて帰るとか、そっちの方が気が滅入る」
「そうか?…………無理はするなよ?」
「平気だって。自分の体調管理ぐらい出来る」
「はいはいっと。あ、店はここな」
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