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嘘つき_8
店を出て、周藤が呼び止めたタクシーへ一緒に中へ乗り込む。周藤は間髪入れず僕の家の住所を運転手に告げた。
ちゃんと覚えてくれてるんだ……数回しか来たことないのに。
「周……藤も、一緒?」
「当たり前だろ。そんなフラフラで一人で帰せないって」
「バカに……すんな……」
「はいはい。ちょっと休んでていいから」
ポンッと頭に乗せられた手を振り払おうとしたけれど、思いの外温かい感触に瞼が落ちていく。
「おやすみ」
最後に聞いたのは優しい声音。
次に意識が戻ったのは身体を何かに揺すられる感覚がしたからだ。
「……?あれ……」
「あ、起きた?」
目の前には広い背中。
「金崎、鍵出せる?」
ボーッとしていた頭が覚醒していく。
僕の身体はあろうことか周藤におぶられ、景色はよく見覚えのある僕の家の前だった。
「え、なっ……」
「わっ、暴れんなって。危ないだろ」
「降ろせ!」
「いいから、ちょっと大人しくしてろよ。フラフラで歩けないんだから。鍵、どこ?」
少し強めに言われ、抵抗をやめた。
「…………鞄の小さいポケット」
「ん。開けるよ」
一言断りを入れてから周藤は僕の家のドアを開ける。
玄関に入っても降ろしてくれる気配はない。
「もういい」
「いいから」
自分の靴を脱いで、それから僕の靴も丁寧に脱がせてくれる。
足取りはそのまま寝室へ。
ベッドに辿り着くと、ようやく体が降ろされた。
座ろうとした体は力が入らず、背中からベッドに沈んでいく。
「金崎、平気?」
「ん……」
「水飲む?」
「いらない……」
何だか眠くなってきた……。
「あ、そのまま寝たらスーツ皺になるからちゃんと脱げよ」
「も、いい……眠い」
「ダメだ。ほら、起きろって。全く……仕方ないな」
夢心地の中、そんな周藤の呟きを聞いたような気がした。
だけど襲い掛かってくる睡魔に勝てなくて、程なくして僕は意識を手放してしまった。
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