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嘘つき_11

「美味しくないでしょう?」 漣さんは僕の心を代弁するように語り掛けてくる。 「……はい」 「それ、金崎くんの気持ちを表現してみたんだ。甘ったるい恋心のはずなのに、後に残るのは苦い気持ちだけ」 「……………」 「本当に伝えるつもりがないのなら、いっそのこと距離を置いてみては?」 漣さんの言うことも頷ける。 どんなに近くにいても僕はこの気持ちを墓場まで持っていくつもりだ。 この先、結婚して、子供が出来て、幸せそうにする周藤を見ることになるなら……いっそ目の前から消えてしまった方が楽だ。 「そうそう、伊吹さんの言うとおり。他に好きなやつとか作ってみたら?」 「……そんなの無理。だって周藤しか好きになったことないし」 「え、嘘、マジ?それは人生損してるって」 そう言われても仕方ない。 だって気がついたらずっと好きだったんだ。 すでに手遅れだったんだ。 「あ、じゃあさ、俺と付き合ってみない?」 「…………は?」 突拍子もない新の提案に、僕は呆気に取られた。 「まずは一晩だけ俺と試してみるってのはどう?」 「………酔っ払い」 「違うって。俺、全然酔わないって知ってるだろ?」 確かに新は周藤と並ぶぐらいには酒が強い。 「無理」 「おい、即答はないだろ?そんなの試してみなきゃ分からないって」 ずいっと近付いてきた新の顔を、手で追いやる。 「俺、佑真なら全然出来るけど?」 「……僕は出来ない」 そんな僕らのやり取りを見ていた漣さんはクスクスと笑った。 「ふふ、いいんじゃない?試してみたら?」 「え…………?」 漣さんが新に賛同するとは思っていなかったから、正直驚いて僕は固まる。 「でも……」 「何か変わるかもしれないよ?前に進まなきゃ」 いつもの笑顔で漣さんは新しいカクテルを僕に差し出す。 一口含んだそれは爽やかな香りが鼻を抜け、後味はスッキリとしていた。 「美味しい……」 「見えなかった何かが分かるかもしれないよ」 漣さんの言葉は妙に説得力がある。 僕はもう一口それを飲むと、新の向き直る。 「………よろしく、お願いします」 「任せとけ」 ふっと笑った新はいつもより妖艶に見えた。

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