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嘘つき_12
それからバーを出て、僕達はホテルへと向かう。
立ち並ぶホテル街はカップルで溢れ返っていた。
「……なあ、男同士でホテルって入れるものなのか?」
ホテルの入り口前、不思議に思った僕の問いに新は呆れた顔をする。
「男が好きなくせにそういう知識は空っぽなんだな」
「僕は周藤が好きなだけで……」
「……大丈夫、普通に入れるから」
中へ入ろうと新は踏み出すけれど、僕の足は鉛のように動かない。
「どうした?」
怪訝に思ったのか新は僕の顔を覗き込む。
「……いや」
「緊張してる?」
ぽんっと頭に手が乗せられる。
「大丈夫だって。優しくしてやるよ?それに本当に無理だってなったら途中で止めてやるから」
な?と微笑みかけられ、ようやく足が軽くなった。
肩を抱かれるようにしながら足を踏み出そうとした時、
「――金崎?」
今、一番聞きたくない声が耳に届いた。
残念ながら何年も何年も想い続けた人の声を聞き間違ったりはしない。
声の方へ視線を向ければ、そこには案の定予想通りの人が立っていた。
「………周藤」
周藤は驚いた顔を見せ、僕の隣では頭を抱える新。
「何でこんなところに……?」
と口にしながら、周藤がここにいる理由なんて明白だ。
何故なら彼の隣には可愛らしい女性が一人立っていたから。
黒いセミロングがよく似合う女性だった。
ああ、きっとこれからこのホテルの入って、楽しい時間を過ごす予定なんだろう。
妙に納得して、急に視界がぼやけてくる。
嫌だな……見たく、ない。
涙が零れ落ちる寸前、僕の目は何かで塞がれて、視界が奪われる。
「久し振りだね、周藤くん」
耳元から新の声がして、視界を塞いだのは彼の手だと理解した。
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