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嘘つき_13

「……恵藤。久し振りだな、こんなところで何してるんだ?」 顔は見えなくなってしまったけど、周藤の声はいつもよりトーンが低く、不機嫌さが窺える。 そう言えば学生時代から周藤と新は仲が良いイメージはなかった。 僕と新が同じ学部で、周藤だけは違う学部だったのもあって、僕の方が新と仲良くなった。 当時から三人で遊ぶことはあっても、二人で会話してるのを殆ど見たことがない。 「野暮だなぁ。何してるって分からね?これからお楽しみするところだよ」 首筋にちゅっと柔らかな唇の感触を感じて、身体がビクッと反応してしまう。 「ちょっ、新!」 目を塞ぐ新の手を掴むがビクともしない。それどころか背中に体温が密着してくる。 「俺達凄く仲良しなんだ。あれ、周藤くんは知らなかった?」 声音から新が笑っているのだと分かる。 「意味分かった?俺と佑真は付き合ってんの。だから邪魔しないで」 「なっ……違っ!」 何を勝手なこと言ってるんだ! 「違うって言ってるけど?」 「恥ずかしがってるだけさ」 今度は唇ではなく舌が首を伝う感覚に力が抜けた。 ふらついた僕の身体はしっかりと新に抱き竦められる。 「あ……っ……」 「佑真、可愛い」 囁かれる言葉にゾクッと背筋に何かが走った。 その直後、僕の身体が物凄い力で新から引き剥がされる。 「――やめろ」 僕の腕を引いたのは周藤の手。 「――邪魔、すんなよ」 低く冷たい新の声を背に受けた僕の身体は、周藤の体温に触れた。 「金崎、こいつと付き合ってるのは本当?」 もう涙なんてとっくに引っ込んで、僕は呆然と周藤を見上げた。 今まで見たことないぐらい険しい表情だ。 「金崎、本当かって訊いてるんだけど?」 少し怖かった。 「僕、僕は…………」 そうだ、僕は……本当はずっと……お前のことが……。 口を開き掛けたとき視界の端に、周藤が連れ立っていた女性の姿が映る。。 顔を真っ赤に染め、僕を見ている。 僕は口を閉ざした。 だめだ、何を言ったって……どうせ彼女に勝てやしない。 周藤は男である僕なんか好きにならない。 僕の想いがどれだけ彼女に勝っても、それはただ一方通行なだけ。 「……………もうっ…………嫌だ……!」 腕を掴む手を力任せに振り払う。 「――おい!?」 呼び止めたのはどっちだったのか分からない。 僕はその声を振り切って、ただがむしゃらに走り、その場から逃げ出した。

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