どうやって家に帰ったのか全く覚えてないが、気づけば僕は自分のベッドに寝転がっていた。 時間を確認しようとスマホに手を伸ばす。 日曜日の夕方十六時だった。 何もしたくない……何も考えたくない…………。 僕はまた静かに目を閉じた。 目から落ちる水滴を感じながら、微睡み始めた意識をそのまま手放した。 次に目を覚ましたのは月曜の昼間。 「あ……仕事……」 マズい……無断欠勤だ……。 スマホには上司と同僚からの着信が一件ずつと、新と周藤から数件の着信があった。 僕はのそのそと起き上がり、まずは上司へと電話を掛ける。 数回のコールのあと繋がった応答は咎めるようなものではなく、安堵の色を見せてくれた。 「金崎です。すみません、連絡なしで休んでしまって」 『いいんだよ。金曜日は無茶なお願いをしてしまったからね。何かあったわけじゃなくて良かった。今日は休んでまた明日から頑張ってくれるかい？』 「はい………。すみませんでした」 『いやいや、ではまた明日』 電話を切って、つくづく良い上司に恵まれたと感謝した。 この人には入社した頃からお世話になりっぱなしだ。 いつか恩返ししなければ。 次は同僚へメールを送る。 心配かけてすまない、大丈夫だからと短く綴った文。 残るは新と周藤だ。 ……正直周藤とはもう関わりたくない。 新には悪いことをしたから一言謝ろうと、電話を掛ける。 少ししていつもと変わらぬ新の声が聞こえた。 『もしもし？』 「金崎です。今、大丈夫？」 『大丈夫だよ。ちょうど昼休みだから』 「新、昨日はごめん……」 『気にすんなよ。急に走り出したからビックリしたけどね』 「ほんとごめん。なんか訳分かんなくなって」 新は責めたりせず、ただ優しく相槌をくれた。 「本当にごめん」 『そんなに謝んなよ。うーん、そうだな……じゃあ今日の夜、ちょっと付き合ってくんね？』 「今日？」 『そ。埋め合わせってことで。ダメ？』 「わかった」 『じゃあ二十二時、いつものバーで』 約束を取り付け、電話は切れた。 手の中のスマホを見つめ、ため息が出る。 残るは周藤だ。 僕はスマホから手を離し、またベッドへ寝転がる。 このまま距離を置いていけば、いつか忘れられるだろうか。 結局そのまま何もせず、気が付けば時刻は二十一時手前。 そろそろ準備して出ようとした時、スマホが着信を知らせた。 画面には“周藤”と表記されている。 その着信に出ることはなく、そのままポケットに突っ込んだ。 部屋を出て戸締まりをし、エレベーターへ乗り込む。 マンションのエントランスを抜け、バーへの道を歩き始めた時、ちょうど着信を知らせていたバイブが止まった。 ……やっと諦めたか。 「――無断欠勤までして何処に行く気だ？」 声は僕の後方から。 ゆっくりと振り返ればマンションの入り口横、壁に背中を預け、手にはスマホを持った周藤の姿があった。