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嘘つき_15
「な、んで……」
「心配だったから。電話は出ない、会社は休む。そりゃ心配するだろ」
周藤は手のスマホをポケットに入れながら、ゆっくりと僕に近付く。
「何処行く気?こんな時間に」
「……コンビニ」
「そう。じゃあ俺も行く」
「は?やだよ、帰れよ」
「……で、本当はどこ行くの?コンビニって割にはきっちり着込んでる」
伊達に長年幼馴染みをやっていない。
周藤は僕の細かなことに気が付く。
……一番肝心なことには気付いてくれないけれど。
「……関係ないだろ。僕がどこに行こうと。何をしようと」
「…………まさか恵藤に会いに行く訳じゃないよな?」
新の名前が出て、ドキッと胸が鳴る。
その一瞬の変化を周藤は見逃さなかった。
「もう一度訊くけど恵藤と付き合ってるのか?」
「そういう訳じゃ…………」
言い掛けて失敗したな、と思った。
新には申し訳ないが付き合っていることにしておけば、楽になれたかもしれない。
「――じゃあ行かせられないな」
周藤は僕の腕を掴む。
「離せよ!誰と会おうが関係ないだろ」
「昨日あれだけ好きに触られていたくせに、会いに行くなんて馬鹿だろ!それとも付き合ってもない奴とそういうことするのか?」
怒りの色が見える周藤の目が僕を捉えては離さない。
もう止めてほしい。
こんなに心配なんてしないでほしい。
また僕の心が期待に満ちてしまう。
「そうだって言ったら?」
「何?」
「だからそうだって言ってるんだよ!僕は男が好きなんだ。どうせ報われない。だから、誰でもいいんだよ……寂しさを埋めてくれるなら……誰でも……誰でもいいんだ……」
そうだ。
これでいい。
これで周藤は僕から離れていく。
きっと軽蔑の眼差しを残して。
それなのに掴まれていた腕は一向に解放されない。
それどころか掴む力は増す一方だ。
「――痛っ……周藤、離せよ」
腕を引こうとしたら、それの倍の力で引っ張られ、周藤は歩き出す。
足取りはマンション。
僕の身体は引き摺られるようにして運ばれていく。
「なに?なんだよ、何するんだよ?」
周藤は無言のまま僕の部屋に向かう。
ドアの前でようやく足を止め、僕を見下ろした。
「開けて」
「なんで……」
「いいから、早く」
有無を言わさぬ口調だった。
初めて見るその姿に、僕は反論出来ずドアの鍵を開けた。
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