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嘘つき_20
『昨日は本当にごめん。あんな風に泣くと思わなくて……酷いことをした。頭に血が上って自分を止められなかった。ごめん……』
「うん」
『……誰でもいいだなんて言うなよ。もっと自分を大切にしてほしい。お前は――』
「――ずっと、好きだった人がいる」
もう、充分だ。
『え……』
「ずっと、ずっと好きだった人がいた」
結局僕は想いを消してしまうのが怖くて、逃げ続けていただけ。
「何年も想い続けて、それでも叶わなくて……苦しかった」
『……金崎?』
でももうやめるから……だからせめて少しだけ、弱音を吐かせて。
「……失恋したんだ。だから自暴自棄になってあんなこと言った。新は僕を慰めようとしてくれていただけ」
『金崎……』
声が震える。
まだ泣いちゃダメだ。
これで、最後だから。
「……っ……でも好きになってみようと、思う。新の事」
『金崎……?泣いてるのか?』
「………っ……泣いてないよ。だから周藤、もう邪魔しないでくれっ」
さようなら、大好きな人。
最後まで嘯 く僕は、なんて可愛いげがないんだろう。
「僕は……前に進みたい……っ」
『金崎、ちょっと待っ――』
「もう、放っておいていいから……これからは新を頼る。お前には……迷惑、掛けないから……」
『金崎!』
もう涙を堪えきれなくて、一方的に通話を切った。
すぐに掛かってきた着信も切って、僕は新の番号を呼び出す。
新が出るのを待ちながら、頬に伝う滴を感じた。
『――もしもし?どうした?』
「……っけて……」
『へ?』
「………助けっ……て……新ぁ………」
『え!?ちょっ、何事!?ああ、待って!泣かなくなよ!』
「……も、無理だ……っ……こんな、こんな気持ち、いらない……っ」
『分かったから。今からそこ行くから。家にいる?』
「………い、る」
『すぐ行くから待ってて』
通話が切れたスマホ。
そしたらまた周藤からの着信があって、僕は電源を落とした。
それから新が来るまで、三十分も掛からなかった。
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