「た、タイム……頼む、ちょっと休憩を……」 「え？もうか？佑真体力ねーな。デスクワークばっかしてるからか？」 足を止めた新は腰に手を当て首を捻る。 体力？ いいや、そういう問題じゃない。 新の選ぶ乗り物は全て絶叫系。 入場から二時間弱は経過していると思うが、目が回って仕方ない。 「うーん、じゃあ丁度いいし昼飯にでもするか」 もう何でもいいからゆっくり座りたいと数回頷きを返す。 「あ、あのホットドッグ美味しそう！俺買ってくるから佑真はそこのベンチにでも座って待ってて」 僕の返事を待たずに新は駆け出して行ってしまう。 ここはお言葉に甘えようと近くのベンチへと腰を下ろした。 疲れた……でも久し振りに楽しいと思える時間だ。 もっと人目が気になると思ったけれど案外そんな事なかった。新が強引に振り回すから人目なんて気にしてる暇がなかったと言う方が正しいか。 素直にならないと損……か。 新の言葉はアイツの生き方そのものだ。 昔から人目など気にするような奴じゃなかった。 周りに隠し続けていた僕とは違って、新は自分がゲイである事を公言していた。 「僕もそうしていたら……何か変わったんだろうか……」 例えば周藤との関係も――。 「――はい、お待たせ」 気付けば目の前に差し出されていたホットドッグ。 「ん、佑真の分な」 「あ、りがと……」 受け取ったそれは袋越しに熱が伝わり、美味しそうなケチャップの匂いが届く。 瞬間、腹の虫が鳴った。 「うっまそうだよな、いただきます！」 隣に腰掛けた新は大きな口を開けて、それに齧り付いた。 僕も習って同じようにそれに齧りつく。 「ん！旨い！な？」 「ん、美味しい……」 「ふははは、佑真めっちゃケチャップ付いてる」 「新だって人の事言えないぞ」 「げ、嘘、マジ？」 恥ずかしいと口元を拭う仕草が何だか可愛らしく思えて、自然と笑いが零れた。 「はは、違うって。逆、逆」 「あ、こっちか……どう？」 「んー……うん、取れてる」 「サンキュ。佑真はここ」 至近距離から伸びてきた指先を避ける事は叶わず、口の端を拭われた。 「……教えてくれれば自分でやる」 「別にいいだろ。今のデートっぽくなかった？」