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嘘つき_27

涙を拭ってくれた新の手が僕の頭の方へと伸ばされていく刹那、肌のぶつかる乾いた音がしてその手は届く事なく弾かれた。 一体何が起きたのかと新と目を合わせたのも束の間、僕の身体は強い力に引かれ後方へと傾いていく。 え、何?これ倒れ――。 そのまま後ろへ倒れることを覚悟したが、その衝撃は訪れず、代わりに背中は柔らかく温かいものにぶつかった。 「――泣かせるな」 「え…………」 後ろから聞こえてきた声には酷く聞き覚えがある。 そんなわけないと瞬時に否定しても、胸はうるさいぐらい高鳴った。 「先に泣かせたのは周藤のくせに自分は棚上げすんだ?」 新が言う。 僕の後ろにいるのは間違いなく周藤だ。 「…………」 「はっ、そんな怒んなよ。別に喧嘩しようって訳じゃないし」 周藤がどんな顔をしているのか僕には分からない。分かるのは身体に回った腕が周藤のもので、それがただ力強いという事だけ。 「家に帰るまでがデートなんだけどな。まあ仕方ない。今回は周藤に譲ってやるか」 肩を竦めた新は僕の方へ視線を向けると「頑張れ」と一言だけ残して踵を返した。 「あ、新……!」 「素直になるのが一番だぞ、佑真」 「ちょっ、待っ――!」 立ち去っていく背中に手を伸ばしても、新は立ち止まってくれない。 「は、離せよ……!」 「……嫌だ」 逃れようとすればする程絡まる腕の力は増すばかり。 新に向けて伸ばした手も、周藤のそれに絡め取られる。 「やっ、離せってば!」 「――ごめん、出来ない」 「〜〜ッな、んで……」 「離したくない。行かせたくない。…………ごめん」 何なんだよ、コイツ。いきなり現れて、人の自由奪って、抱き締めて、謝って……。 ふざけんなって思うのに密着する周藤の体温に、どうしてこんなにも安心してしまうんだ。 「…………話をしたいんだ。頼むから逃げないでくれ」 「話なら前にした……あれ以上言う事なんてない」 「俺にはあるんだ。どうしても言いたいこと。ちゃんと話をさせてくれるまで絶対に離さない」 ああ、もう。そんなに強く抱き締められたら、身体の力抜けるだろ、馬鹿。

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