30 / 41
嘘つき_30
頰を掻いた周藤から僕は目を逸らす。
「この間は本当にごめん…………。泣かせるつもりじゃなかった。ただ俺の知らない誰かや恵藤の所に行かせたくなくて、必死で、自分を抑えられなかった」
「……それは、もういい」
膝の上、ギュッと握り締めた手の上から周藤の温かいそれが重なる。
「……あの電話で金崎に恵藤を好きになってみようと思うって言われた時、頭が真っ白で、だけど全身が沸々と熱くなって。電話切られた瞬間にああ、これ嫉妬してるんだって自覚した」
周藤の手を跳ね返そうと試みるも、それは微動だにしなかった。
「もし、もし金崎の言った好きだった人ってのが俺ならって……気付いたら家飛び出してここに向かって走ってた。そしたらちょうどエントランスで恵藤と鉢合わせてさ、言われたんだよ。呼ばれてここに来たのかって」
「…………」
違うと答えた周藤に恵藤は「俺は佑真に呼ばれた。だから泣いてるアイツの傍にいる権利がある。だけど周藤にはないだろ?」と言ったそうだ。
そんな事僕には一言も言わなかったくせに。
「悔しかったけど正しいと思った。仮に金崎の好きだった人ってのが俺だったとしても、金崎が前に進みたいって決めて、その相手に恵藤を選んだのなら、俺は応援してやるべきだと思った。俺はいつもそんな恋愛をしてきたから」
知ってる。
周藤の恋はいつだって相手の幸せを願って終わる。
僕は、それをいつも見てきた。
「連絡をしなかった間、身を引くのは正しいことなんだって思いながらも後悔ばっかりしてた。どうしてもっと早く自覚出来なかったんだろう、金崎の気持ちちゃんと確かめればよかったって繰り返し。気付けば金崎の事ばっか考えてたよ」
僕と、同じ…………。
「それでどれだけ経っても諦められなくて、それどころか気持ちが大きくなるばかりだったから。今日は、チャンスが欲しくて会いに来たんだ」
「チャン、ス…………?」
「うん。恵藤じゃなくて、俺の事好きになってほしいって伝えに来た」
ともだちにシェアしよう!