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嘘つき_32

力一杯周藤の服を掴んでも、消えてなくなったりしない。 夢じゃないんだ、これ。 ああ、でもまだ解決してない事がある。 「…………あの子は?」 「あの子?」 「この前、一緒にいた……黒髪の子……」 「一緒にいた黒髪…………ああ、あれ従妹だけど」 「…………え、従妹?」 「てかお前も昔会ってるぞ?あー、でもあの時アイツ中学生ぐらいだったし、分からなくても仕方ないか」 「じ、じゃあ何であんな所歩いて……」 「ん?あの道抜けた先に旨い中華屋があって、そこ連れてこうとしてただけだけど…………ってまさか、盛大に誤解してた?」 誤解?誤解って………。 「す、するだろ!あんな、紛らわしい!」 「痛っ、本気で殴るなよ……悪かったって」 この恥ずかしいやら嬉しいやら悔しいやらでやり場のない気持ちを、とりあえず拳に込めて周藤の背中にぶつけてやる。 「他には?不安に思ってる事とかない?この際だ、佑真が納得するまで全部答えるよ」 「沢山ある……けど、全部吹っ飛んだ」 「俺の事信じてくれる?」 「五十パーセント」 「手厳しいな、頑張らないと」 額に当たった柔らかな感触は、きっと今目の前で弧を描いている唇に違いない。 「〜〜っ、は、恥ずかしい事するな」 「照れてる?はは、顔真っ赤」 「……るさい」 「佑真、今度は俺が訊いていい?」 「?」 「恵藤とさ、どこまでした?」 一瞬言葉に詰まったのは迫る周藤のその目があまりにも真剣だったから。 「…………な、何もしてない」 「本当に?さっきキスされそうになってただろ?」 「それは、されそうだったけど、してない……本当にって、見てたのか?」 「佑真の事待ってたって言っただろ。もしあの時、佑真が恵藤を受け入れてたら何も言わずに帰るつもりだった。だけど佑真が泣いてるの見て、すぐに足が動いた。アイツの言う通り本当棚上げだよな」 本当にな、と喉まで出かかった悪態を飲み込む。だって眉尻を下げた周藤が悲しそうに笑ったんだ。そんな顔を、罪悪感を見せられたら胸が苦しい。 だから代わりに胸元のシャツを掴んでそれを引き寄せてやる。 「え…………」 「もう泣かない」 ほんの少しだけ重ねた唇の恥ずかしさと瞠目する周藤の顔の可笑しさに、僕は、堪らず笑みを溢した。 「もう、泣かないよ」

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