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なな
「あれ…そういえば…」
「ん?どうした中田?」
相変わらずいつも通りのお昼休みを過ごしていたが、ふと頭によぎった疑問。
俺は田中に自分を好きだと自覚させてどうするんだ?
つか、俺は田中の事が好きなのか??
「いや、別に何でもない」
「何でもない事はないでしょ」
いや、考えるまでもない。
俺は、田中が好きだ。
それで、どうなりたい?
例えば、付き合うとか。あ、付き合いたい。
「……田中って俺の事好きなの?」
「…………」
はっ!思わず口から…
「ん~、好きだよ」
ドキッ
「そ、それは…恋としてって事……?」
「うーん、友達、としてかな」
やっぱり、こいつは一線から先に入ってこない。もしかしたらほんとにこいつにとっては俺の事恋愛感情としての好きじゃないのかも……。
でも、それは俺もきちんと気持ちを伝えてないから。
うん。この際ハッキリさせたい。
「俺は違う」
「中田…?」
先に進みたい。恋人になりたい。
「俺、田中の事恋愛感情として好きだ」
言った………………。
「…俺は、中田の事そういう風に見れない。ゴメン…」
あ…………。
なんだ、結局全部俺の勘違いだったの?
あんな事までしといて、俺、…。
あ、泣きそう…辛い……でも泣いてるとこ見られたら今度こそほんとに惨めだ。
「………そ、分かった。もう俺たち友達にもなれないね」
「っ…………ゴメン」
「謝んなくていいよ。…じゃあね」
「なかっ………!」
「近寄んないでっ!!!」
「っ………!!」
俺はその場から逃げ出した。んでもって、誰も来ない方の校舎の階段を駆け上がって、屋上の扉に手をかける。
ガチャガチャ!
「あ~もう!鍵かかってるし!!」
その場にへたりこんで泣き崩れる。
好きだった。好きになってしまった。今でも田中は俺の事が好きなんじゃないかって思ってしまう。
でも、ハッキリ断られてしまった。
「うぅ~……………」
「あの…先輩…?」
ハッと息をのみ声のする方に顔を上げると後輩の『白峰(しろみね)』君がいた。
ふわふわサラサラの白髪に夜空のような黒い瞳。背は俺と変わらないくらいだが、整った顔をしており、モブ顔の俺とは正反対の存在。ちなみに、学年は違うが同じ係になった時に面識があったので初対面ではない。
が、何でこんなところに一人でいるのかな?
って、それより俺号泣してるんだけど!!
はっず!!!
「あっ!ご、ごめん!人いるって知らなくて…!」
「いや、僕は別に全然大丈夫ですよ。でも先輩は大丈夫…じゃなさそうですね。これどうぞ」
「あ…ありがとう」
白峰君は出来た後輩のようで、俺に綺麗なネイビーカラーのハンカチを貸してくれた。
いい子だ………。
「…ま、詳しくは聞かないですけど、そのまま教室には戻らない方が良さそうですよね。僕は気にしませんから、とりあえず落ち着くまでここにいたら良いんじゃないですか?」
ツンデレ…???じゃなくて、
「うん。そうさせてもらうね、ありがとう」
「別に僕は何も…」
「ううん、おかげでちょっと落ち着いた」
「…そうですか」
俺は壁にもたれかかって座った。
落ち着きはしたけど涙は全然止まらない。
っていうか、白峰君よくこんな状況の中で読書できるな!まあ、助かるけど…。
~10分後~
「うっ…ズビッ…ズビビッ」
「…先輩、もうすぐ昼休み終わっちゃいますよ?」
流石に10分も泣き続ける俺を見て気が引けたのか声をかけられた。
「わがっでう…ひっく」
「…はぁ、このままじゃ一生泣いてそうですね。先輩が嫌でなければ僕に泣いてる理由を聞かせてくれませんか?」
いや、それはまずいでしょ。
「僕、誓って誰にも言いませんから」
…でも、もう一人で抱え込むの正直辛い。
「…相手の名前は秘密だけど、話聞いてくれる…?」
「はい、分かりました」
「お願いだから引かないでね…」
「はぁ……?」
俺は田中にされた事を全て話した。
「え!?何ですかそれ、相手最低じゃないですか!」
「いやでも、友達ならそれくらい…」
「普通なわけないでしょう!!先輩チョロ過ぎますよ!相手の好奇心に弄ばれたんですよ!」
「ハッキリ言わないでよぉ!」
「はぁ…ホントに先輩チョロすぎ…」
なんだよ!そんな言わなくて良くない?
俺はまたぶわっと涙が溢れ出る。
「情けないって分かってる!しかも残ったものが乳首とケツでイけるって事しかないのもかなり辛いんだから!」
「いや…すみません。確かにそれはキツイですよね」
「そうだよ…!今だってシャツに乳首擦れて変な感じだし、一人でスるときも後ろ弄っちゃうし!」
「えぇ…完全に開発されてるじゃないですか(汗)」
「そうだよぉ…俺の体、こんなにしたくせに…あの馬鹿…」
ポロポロと涙が落ちる。
その時頭にポンポンと手がのった。
「冗談ですよ、辛かったですね。話してくださってありがとうございます。僕でよければいつでも力になりますから」
「し、白峰君…」
白峰君に励まされ、少し心が落ち着いた。
「僕、みんなにキャーキャー言われるの鬱陶しくて、いつも昼休みは一人でここに居るんです。ここなら本当の自分を出せますし」
「そういえば白峰君っていつもはここまでズバズバもの言わないよね」
「それなりに猫被ってますから。だから、僕がここにいたことは秘密にしてて下さい」
「そりゃ、もちろん」
「それさえ守って貰えれば、またいつでも来てください。僕でよければ話し相手になりますよ」
この子マジでいい子すぎない???白峰君がモテる理由が分かる気がする…。
「涙も止まってきましたね。戻るのが難しかったら保健室で休んでも良いんですよ?僕が先輩の教室まで伝えてあげますから」
「や、流石にそこまではさせられないよ。気持ちだけもらっとくね。ありがとう白峰君」
「いえ…」
俺は階段を下り始める。と、同時に呼び止められた。
「先輩!」
「ん?」
「…僕、待ってますからね!」
「ふふ、ハンカチ洗って返さなきゃだし。絶対また来るよ」
俺はひらひらと手を振ってその場を後にした。
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