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はち

「よう、中田おはよう」 「ああ、田中。おはよう」 あの日から約2週間経った。 俺と田中は周りから見て不自然じゃないような感じだが、挨拶を交わす程度の関係になっていた。 昼休みも、俺は屋上前の階段のスペースに、田中は知らない。が、お互い話すことすらほぼ無くなった。 でも、これで良かったのかも知れない。 今でも田中を見ると悲しくて泣きそうになってしまうから。 それに、最近は後輩が話し相手になってくれてあまり寂しくない。 そんな事を考えながら、席に着くと田中の周りに少し人だかりが出来ていることに気付いた。 「え!?マジで田中!?」 思わず何を話してるのか気になって耳を傾けてしまう。 もう友達と言えるかどうかも怪しいのに…どうしても気になってしまった。 「うん。マジマジ」 「え、どした?何があったん?」 「田中、彼女出来たんだって!!」 ……………そっか。 そうだよね、普通は。 俺だって元々女の子が好きだし。 今は、ちょっと違うけど。 ………もうやだ。 「クッソー!抜けがけされたー!!!」 「でさ、その子可愛いの!?」 「まあ、そりゃそうだろ」 ………やめて。 「あ!お〜い中田も聞けよ〜!」 ……………やめて。 「こいつさ」 ……………やめて。 「彼女ーーー」 …………………………………やめて!!! 「先輩!」 「あ………」 白峰君………。 白峰君は急いでこちらに駆け寄り、おでこに手を当てる。 「凄い熱です。保健室に行きましょう、僕が支えますから」 嘘だよ。熱なんてない。そっか、気使ってくれたんだ。ごめん、ごめんね。 「うわっ!ホントだ中田めっちゃ顔色悪いな(汗)ん…?田中?」 白峰君が俺の背中に手を回し誘導する。 が、その瞬間何かに手首を引かれ俺はやつの体にぶつかった。 「……………」 「………田中先輩」 久しぶりに触れた体、繋がれたままの手のひらから伝わる体温に思わずドキッとしてしまう。 でも、これもきっと気まぐれ。コイツにはもう彼女もいるし…。 もう、こういうこと、本当にやめて欲しい。 「………後輩には任せられないよ」 「………はは、そういうのは彼女さんにしてあげてください。僕も男なんで、心配はいりませんよ」 「ちょ…田中どした?(笑)そんくらい任せたらいいじゃん?」 「………中田…」 出た、やめてよ。その不安そうな顔。 俺の方が何倍も辛いのに…。 「離して」 「………」 「白峰君と、行くから」 「!」 するりと手が離れる。すかさず白峰君が俺の手を引き、歩き出した。 「なんかすみません、お騒がせしました」 「い、いや!お騒がせしたのはうちの田中の方だから気にせんで!(汗)」 「(ペコ)では」 俺は白峰君に手を引かれ保健室、を通り過ぎていつもの階段のスペースまで来た。 「保健室、だったらあの人来るかもしれないから。念の為こっちに来ました」 「………うん」 俺は力が抜けて壁にへたり込む。 「………例の相手、田中先輩だったんですね」 「………うん」 もう涙も出てこない。 正直、まだ期待してしまっている自分がいる。それが死ぬほど辛い。 「先輩」 「俺…もう…」 もう、 「先輩!」 もう… 「もう…何もかも忘れたい………」 ちゅ 「ん………」 白峰君に、キス…され、て、る? 「ん…んぅ…あ…」 「…………」 ああ、何だか落ち着く…。 嫌なことが全部、洗い流されるようだ…。 「ぷはっ………先輩、僕の目をみてください」 「し、ろみね、君……」 「好きです」 ドキ 「え、え?し、白峰君!?」 するり、とシャツの中に白峰君の両手が這い、思わずビクッと反応してしまう。 そのまま、その手は上に行き俺の胸をスルスルと撫で始めた。 そして開発された『そこ』はいとも簡単に硬くなってしまった。 「ひゃっ……あっ…!」 「何もかも忘れたいなら、上書きしちゃえば良いんですよ」 白峰君は指で突起を転がしたり、つねっったり、押し込んだりして刺激した。 コロコロ 「ひゃっ!…まっ………!///」ビクビク キュッ 「あうっ……!?///」ビクッ ぐりぃ 「はっ………!あんっ!///」ビクビクッ 「先輩、イって」 「あっ!…白峰く………」 それ…田中にも言われたあの時の…… ぎゅうぅぅ! 「やっ…んぁああぁああ!!!///」 ドクッ…! 俺、今イっ… 「…先輩、どうですか?忘れられそうですか?」 「はぁ…はぁ……」 「僕は先輩の事悲しませたりしませんよ…だから、僕を選んで下さい…」 ぎゅっと体を抱きしめられる。 あったかい…田中の火傷しそうなくらい熱い感覚じゃない。 …でも、 「……白峰君には、俺と同じ思いをして欲しくないから…」 「……しませんよ」 「…ゴメン」 「…謝らないでください」 抱きしめている手が震えているのが分かる。 ゴメン、ゴメンな。 俺はそっと白峰君から離れる。 「…行っちゃうんですね」 「…うん、俺、どうしようもなく田中が好きなんだ」 「……先輩がそう決めたのなら、僕は止めません」 「…白峰君には必ずいい出会いがある。絶対に…」 「……………」 「本当にありがとう…」 俺は、階段を降り始めた。 ーーーーー 「……あ〜あ、フられちゃった」 僕はその場に座り込む。 ずっと手を出さずに我慢してたのにな〜…。 「いい出会いなんて、そうそうないと思うけどな…」 「そうだぜ?そんなものはない」 「っ!?誰だ!?」 声の方に目をやると屋上の扉がキィと開いた。漆黒の髪に赤い瞳、コイツは…! 「それにしてもイイもん見させて貰ったぜ〜?まさかお前があいつをすきでしかも乳首だけでイかすんだから(笑)」 「っ!!」 そうだ。コイツは『黒鉄(くろがね)』問題ばかり起こすサイコ野郎で、絶対に目をつけられてはいけない。目をつけられたら最後、学校に居られなくなるって言われてる超危険人物なのだ。 「くくくっ…中田とか言ったっけ?アイツの秘密バラしたら、どうなるかなぁ?」 「!!!」 コイツ…先輩に目を付けるつもりか!? 絶対にそれだけは許さない、させない。 「黒鉄先輩、お願いします。それだけはやめて下さい」 俺は深々と頭を下げる。 「だが暇なんだよな、最近いいネタ無くて。これはもう決定事項だから残念だけど次のターゲットは中田に決定〜」 「暇なら僕が相手します。どうか中田先輩には手出ししないで下さい」 「…ふ〜ん、じゃあ、あいつが田中にされた事やってもいい?」 「………何でもどうぞ、その代わり中田先輩には一切手出ししないで下さい」 「はいはい。潔いね〜!仕方ないから次のターゲットは君に変更してあげる」 黒鉄は僕に重いキスを落とした。 ………これは、最悪な2人が最悪な出会いから始める、また別の恋のお話。

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