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第8話
今日、俺がこの店に来たのは牛丼を食べるためだけではなかった。
このチェーン店は今キャンペーンをやっていて、牛丼を食べると、一食につき一枚くじが引ける。
それに当たれば「ニャンダ」のお皿が貰えるのだ。
ニャンダとは俺の好きなゆるキャラで、顔が猫、体がダックスフントという愛らしい見た目をしている。
このキャラクターにはまってから、色々集めているせいで俺の家はいつしかニャンダグッズが溢れかえっていた。
くじには「大吉」「末吉」「小吉」「凶」があり、大吉がでると一枚で一皿、末吉と小吉は三枚で一皿と交換してもらえる。
俺は既に末吉を二枚持っていたから、今日は何がでたとしても、皿をゲットできる予定だった。
ドキドキしながら会計し、おつりとくじを貰う。
店から出てすぐの路上で、俺は十円玉を片手に早速スクラッチを始めた。
結果は、凶。
「嘘だろお」
俺はその場にしゃがみこんだ。
凶なんて大吉よりも少ない本数だとネットにも書いてあったのに。
凶は完全な外れで何枚集めても意味がなかった。
涙目になった俺のポケットが震える。
手を突っ込んでスマホを取り出すと、相手も確認しないで俺は通話ボタンを押した。
「はい」
「あっ、唯希?俺」
「母さん。どうしたの?」
「いや、樹がさ。唯希に渡したいものがあるから、今日うちに寄れないかって」
「うん、いいよ。大丈夫。今から行くから30分くらいかかるけど」
「分かった。夕飯は?」
俺は手の中のくじに目を落とした。
「もう食べちゃった」
「そうか。残念だな。今日は唯希の好きなトマト味のミートボールスープを作ったのに」
「ええっ、そうなんだ」
俺はがっくりと肩を落とした。
「まあ、それも持って帰ればいい。タッパに詰めてあげるから。じゃあ、待ってるから気を付けて」
「うん、あとで」
俺は電話を切ると、駅にむかった。
電車に揺られ、降りた駅から歩くこと5分。
馬鹿でかい実家の前に立つ。
鍵を開けると、玄関までトマトスープの良い香りが漂っていた。
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