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第11話
「冬、おかえり」
「ただいま。兄さんもおかえりなさい」
「冬っ。お前は受験生だろう。さっさと部屋に戻って勉強しろ」
父さんのあまりの剣幕に俺の肩がびくりと跳ねあがる。
「分かってるよ。でも少しくらい息抜きしたっていいだろ?勉強だって毎日ちゃんとやってるんだし」
怒鳴られた冬本人は平然と父さんに言い返している。
父さんは怒りを抑えるかのように大きく息を吐いた。
「樹。それよりさ、唯希に渡すものがあるんだろ?」
「おお、そうだった」
母さんの言葉に、父さんがリビングから飛び出していく。
「俺、着替えて来る」
冬もリビングから出て行った。
「父さんと冬どうしたの?」
小声で尋ねると、母さんが困惑した表情を浮かべた。
「冬が志望校を海外にしたろ?あそこらへんから樹がなんかピリピリしててな」
「父さん、冬が留学することが寂しくて反対しているのかな?俺だって冬は国内の大学に進学するとばかり思ってたから、最初聞いた時はびっくりしたし」
「まあな。俺も冬の進路変更を聞いたときは驚いたよ。それもこんな受験間近にだろ?冬の奴一体何を考えてんだか」
その時、父さんが長くて白い物体を持ってリビングに入ってきた。
「唯希、これプレゼント」
そう言って押し付けられた物を見て、俺は満面の笑みを浮かべた。
「わあ、ニャンダだ」
それはニャンダの抱き枕だった。
「今度そのニャンダの会社とうちのカップラーメンがコラボすることになってな。これ非売品のサンプルなんだが、唯希が喜ぶかと思って一つ貰ってきたんだ」
「父さん、ありがとう。すごく嬉しい」
175㎝越えの大男がキャラクターの抱き枕を腕に抱え、微笑む姿なんてある意味滑稽だが、うちの家族はそんな俺を見ても眉を顰めず良かったねと一緒に笑ってくれる。
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