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第13話
「唯希の時は、本当に何の心配もいらなかったな」
「えっ」
父さんの言葉に俺は一旦考えるのを止め、会話に集中した。
「大学受験の時さ。俺達が何かアドバイスする前に、お前は家から通える金のかからない国立をきちんと選んでて。俺の若い頃とは違ってしっかりしているなと感心したよ」
「父さんは大学途中で編入したんだよね?」
「ああ、最初は真と同じ大学ならどこでもいいと考えていたからな。ろくなもんじゃない」
父さんが自分の言葉に苦笑する。
「でもな、唯希。お前だってそんなにいつも優等生しなくてもいいんだぞ。お兄ちゃんだからって頑張りすぎる必要なんかどこにもないんだ」
「そんな無理なんかしていないよ。俺はただ勉強が好きなだけで」
父さんが俺の髪の毛をくしゃりとかき混ぜた。
「とにかくいつでも何かあったら頼れって話だ。家族なんだからな」
「うん」
俺は俯いた。
父さん、本当は俺、怖くて堪らないんだ。
俺はいつか自分が実の父親みたいに嫌がるオメガに無理やり酷いことをしてしまうんじゃないかって。
その恐怖に俺はずっと囚われ続けているんだ。
ねえ父さん、俺は一体どうしたらいいと思う?
心の中の声は実際に発することはできなかった。
もし、俺が父さんの実の子供だったら。
こんな気持ちも素直に打ち明けられていたのだろうか。
いや、そもそも俺が父さんの子供だったら、こんなことに悩んでいなかった。
俺は胸元の抱き枕に顔を埋め、ただ深く息を吐いた。
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