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第15話
せめてクリーニング代を貰ってくれという店員に安物のセーターだから気にしないで欲しいと断り店をでると、ロングTシャツ一枚で俺は通りを歩いた。
片手には、ごみ袋に入ったセーター。
いくら晴れているとはいえ、11月の屋外でこの格好じゃ風邪をひいてしまう。
俺は大きなくしゃみを一つすると体を震わせた。
「課長?」
声をかけられ振り返ると、そこに立っていたのは大賀だった。
大賀は驚愕したように小さく口を開けていたが、俺も似たような顔をしているだろう。
「大賀。どうしてこんなところに?」
「それはこっちの台詞ですよ。俺の家、この商店街の中のアパートなんです。課長こそこんなところでそんな薄着で一体どうしたんですか?」
事情を簡単に話すと、大賀は明らかに笑いを嚙み殺している表情になった。
「それは大変でしたね。どうぞうちに寄っていってください。乾燥機もあるから、それ洗っちゃいましょう」
大賀は俺が手に持っていたビニール袋を指さす。
「でもそんな迷惑をかけるわけには」
俺がおろおろしながらも大きなくしゃみをすると、大賀がぷっと吹きだす。
「いいから。そのままじゃ課長風邪ひいちゃいますよ。ほら行きましょう」
大賀が俺の手首を掴み、歩き始める。
体は凍えそうなくらい寒いのに、掴まれた手首と頬は燃えるように熱くて。
結局俺は大賀の手を振り払えないまま、後をついて行った。
大賀の家は1Kのアパートだった。
俺を部屋に通すと、大賀はビニール袋を引き取った。
俺に灰色のパーカーを手渡し、大賀は風呂場と思われる場所に消えて行く。
大賀のパーカーは着てみるとだいぶ大きくて、俺の指先まで隠れてしまう。
男の一人暮らしとは思えないほど大賀の部屋はきちんと整頓されていて、俺はカーペットの敷かれた床に腰を降ろすと、きょろきょろと辺りを見回した。
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