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第20話

牛丼を並んで二人で食べ、お会計で貰ったくじを俺は早速スクラッチした。  結果は小吉で、これでやっと皿一枚と交換できる。 「あっ、大吉だ」 「えっ」  俺は大賀の手に握られているくじに飛びついた。  そこには確かに大吉の文字がある。 「すごいぞ、これっ。ネットでも大吉は幻って言われてて。大吉は一枚で一皿と交換できるんだよ。いいなあ。大賀どの皿にする?俺的には赤がお勧めで」  はしゃいだ俺を見て大賀が目を見開く。  いい年をして一人で興奮してしまったのが急に気恥ずかしくなって、俺は大賀の手を離すと後ずさった。  くすりと大賀の笑う声がする。  大賀は俺の手をとると、そこにくじをねじ込んだ。 「あげます」 「えっ、いやでも、当たったのは大賀で」 「お会計してくれたのは課長でしょ?それに俺、ニャンダそんなに好きじゃないんです」 「何で?可愛いのに」  きょとんとした俺の問いに、大賀がまた笑う。 「可愛いかもしれませんけど、俺は好きなタイプじゃないんで」 「いいのか?本当に貰うぞ」 「ええ、良いですよ」  俺はくじを緑と赤の皿に引き換えた。  もとからどちらの色と交換するか、ずっと悩んでいたのだ。  皿が二枚入ったビニールを渡され、俺は店を出ると待っていた大賀に頭を下げた。 「ありがとう、大賀。ずっと欲しかったから嬉しい」  満面の笑みを浮かべて、大賀を見ると、大賀の顔が真っ赤に染まる。  ぷいと大賀は顔を背けた。 「なんていうか、課長もそういう顔するんですね」  ぼそりと大賀が呟く。 「えっ?」 「いいんです。それより昼休みが終わっちまうから早く戻りましょう」  急かされ、俺はせっかく貰った皿を割らないよう両手で抱えると、大賀と一緒に走り始めた。

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