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第22話

「つうか、あれさ。渋谷さんも悪いよな」  声のした方を振り返るとベータの男二人が、ひそひそと話していた。 「それな。渋谷さんもってか、渋谷さんが悪いだろ。だから俺、オメガと働くの嫌なんだよ」 「おいっ」  大賀が怖い顔をして二人を睨みつける。 「陰口を叩くのはやめろ」 「いや、だってなあ」  男の一人が困ったような顔をして、大賀を見る。 「彼女だって好きでそういう体質に産まれたわけじゃないだろ?彼女の気持ちも考えてやれよ」  大賀の正論に男達は顔を見合わせると、そそくさとその場から立ち去った。  上司としてもアルファとしてもヒートになって襲われた彼女を助けなくちゃいけない立場だったのに、俺は全く動けなかった。  いや、むしろ渋谷さんが医務室に行くと言った時に誰か付き添いを頼めばこんなことだって起きなかった。  あの時俺は自分が彼女を襲ってしまったらどうしようとそればかりに気をとられて、彼女のことを思いやれていなかった。 「最低だ」  自分の不甲斐なさに思わず呟くと、近くにいた大賀と目があう。 「課長までそういうこと言うんですね」  大賀はこちらが凍りつくような視線で俺を見つめた。 「あんたならそんな風にオメガを差別したりしないと思っていたんだけどな」 「大賀」  伸ばした手の先で、大賀はこちらに背中をむけた。  去っていく大賀に俺は何も言うことができなかった。

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