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第27話
「いえ、謝らないといけないのは俺の方だと思います」
俺は大賀の言葉に首を傾げる。
「俺、課長のこと誤解していた気がするんです」
大賀の真剣な眼差しに俺は落ち着かない気分になった。
「課長をスーツから寝間着に着替えさせるとき、俺、見たんです。課長の太ももの傷を」
ただでさえ熱で赤い俺の頬が更に赤く染まる。
見られた。
大賀に俺のコンプレックスを。
俺は大賀に泣きわめいて出ていけと言いたいような、縋りついて黙っていてくれと懇願したいような、二つの気持の狭間で揺れ動いた。
「それ、注射の痕ですよね?それも古い傷だけじゃない。一体何があったんですか?」
俺は手元の布団をぐっと力強く握りしめた。
「言いたくないのなら、無理に話せとは言いませんけど」
「いや、お前には迷惑かけたしな」
俺が倒れた原因は最近の抑制剤の乱用のせいではないかと考えていた。
それと、あの毎晩の悪夢。
望んでもいないのに俺の介抱をさせてしまった大賀には、俺が倒れた原因を知る権利があると思った。
それにどうせあの醜い太もももを見られているんだ。
今更隠したって意味ないさ。という開き直った気持ちも俺にはあった。
「俺がオメガを避けているのは何となく気付いていただろ?」
神妙な表情で大賀が頷く。
「俺の本当の父親は大企業の経営者でも何でもない。母親が高校生の時初めてヒートになって訳も分からずに苦しんでいたところにつけこんで、無理やりレイプした最低の男なんだよ」
小学生の時、俺の前に実の父親が現れた。
その前から両親のどちらにも似ていない自分の出生に、疑問を持つことはしばしばあった。
しかし俺はなるべくその疑問を心の奥底にしまい、鍵をかけてみない振りをしていた。
だが実の父親のまるで自分を鏡に映したようなそっくりな顔を見た瞬間、パンドラの箱は開いた。
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